ある程度まで上がった可動率を維持するにはカイゼンを続ける必要があります。例えば、今の状態で可動率が80%だったとしても治具が摩耗してくると不良が起きやすくなります。治具が摩耗しないようにはどうすればよいか、摩耗したとしてもすぐに交換できるか、交換のタイミングを事前に予測できるか、など常に次の手を考えなくてはなりません。そういう意味ではカイゼンは終わりなき旅ですね。摩耗のタイミングもデータをとり続ければ予測可能になるはずですが、そのためにどんなデータが必要なのかを探り当てようとしているのが今の状態です。
そういう意味では、iSTCの取り組みはまだまだ始まったばかりです。あらゆる工場のデータが溜まってくれば、市場動向を先読みできるような仕組みが作れるかもしれません。そういう仕組みが作れれば、例えば、現状では可動率50%で赤字経営をしている工場でも、黒字化の境界線が計算でき、それを上回る可動率が実現可能だと判断できれば、他の工場を買収することも視野に入ってくるでしょう。逆に、今は黒字経営でも伸び代がない、と判断できれば、投資リスクも回避できます。そういう判断ができるような材料となるデータをもっと集めたいですね。
50%の可動率が80%まで上がる、ということは単純計算すると、現状50億円の売り上げが80億円にできる、ということなので、その工場は宝の山だということになります。実際、可動率が50%くらいの工場は日本でも珍しくありません。ただ、どの工場が宝の山なのか、というのは現状ではまだ明確には見えていません。iSTCには定数的にデータが集まってきていますので、そういった分析も少しずつ可能になってきています。
これまでは、データがないところで「〜だろう」という話でしか行動できなかったのが、「〜でした」というところで根拠のある議論が展開できるようになりつつあります。そういう意味では、データを活用することによって新たな境地が切り開かれている感はありますね。
これまでは体を使ったカイゼンをやってきました。それこそストップウォッチを片手にやるようなカイゼンでした。カイゼンにIoTソリューションを加えることで、効率性が上がったことをデータで裏付けることができるようになりました。これにより無駄な動きが省略され、私自身も多くの作業から解放されたように感じています。そして、これまで作業に奪われていた時間を他のことに活かせる、という意味では自分の仕事の付加価値がデータ活用によって上がったことを実感しています。
BIツールやRPAなどと同様に魔法の杖のように思われがちですが、IoTを導入しただけ、データが集まっただけで生産性が上がるわけではありません。ラインストップミーティングを始めとした地道な試行錯誤の積み重ねが少しずつ成果に結びついているのです。
生産量を増やすには可動時間を長くすれば良い、可動時間を長くするにはラインを停止させる要因を減らせばいい、要因を減らすためにはあきらめずにしつこく取り組めばいい、手順を見直してCTを短縮すればいい。こうして書いてしまうと当たり前のことの羅列のようにも思えますが、基本に忠実に効率化を目指し、一つずつ実現させてきたという実績に裏付けられた自信が黒川氏の言葉から感じられました。木村社長の著書『Small Factory 4.0 第四次「町工場」革命を目指せ!』のタイトル通り、iSTCはこれからも自らの手法のカイゼンを続け、多くの町工場のイノベーションを支援していくことでしょう。
実際、iSTCの活躍は日本国内だけに留まらず、すでにタイの工場のカイゼン活動に着手しています。次回は、iSTCにとって初の海外事例となるタイのSAM(Siam Asahi Manufacturing)工場での取り組みの様子を紹介します。 (タイの事例記事はこちら)
iSTCおよび旭鉄工の工場に興味を持たれた方は下記の紹介動画も合わせてご覧ください!
(データのじかん編集部)
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