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【WAF2018 OSAKA】良いものを作れば勝てる時代は終わった。「デザイン経営の必要性」:鷲田 祐一 教授(前編)

         

改めて考えたい経営におけるデザインの重要性

このようなプラットフォームがなぜできたのかを考えるとき、しかも、経路依存性を伴うネットワーク効果によってできあがっていると考えたときに、創始者たちが最初に何をしたのかというと、「デザインをしていた」ということなんですね。

顧客を得るためのデザインをしているわけです。最初は顧客も少ないですから、自分の目に見える顧客に対して「こうすると使い勝手がいいよね」「こうしたら喜んでくれるよね」と考えてデザインをしてきたことで、いまでは世界をほぼ支配するようなデファクトの企業になったと言えると思います。これが「インターネット付随サービス」で、いま起こっていることです。

先ほど申し上げたとおり、創業者たちはそれほどすごい技術を使っていたわけではありません。しかし、ユーザーとコミュニケーションをするための「ユーザーとの接点をデザインしていた」というところが大きなポイントです。

そして、この次のページが重要になってくるわけです。これも古くて、1980年代にMITのアーバンというマーケティングの学者が下記のような図を描いています。

「製品開発はこういうプロセスですよ」ということを描いています。おそらく、アーバンはその時はあまり意図せずに描いていると思うのですが、実はこの図の中に「デザイン」という言葉が2度使われています

1度目は、一番上流工程のところに「デザイン過程」という言葉を書いています。おそらくアーバンさん本人は、いまのような時代が来るとは考えておらず、「最初にデザインありき」という気持ちで書いているのではないかと。

その次が、日本語で言うところの「意匠設計」ですね。意匠、色や形を決める意味での「デザイン」が真ん中ぐらいにあります。上流工程の「デザイン」とは、経営層、財務部署、マーケティング部署が中心にサポートをしていく中で、デザイナーが商品の設計を行う、ということです。

日本の企業で、これが実現できるかというと、相当難しいです。取締役や社長が集まっているところに財務担当者と戦略担当者が「我が社の今後の方向性」について話をしているところに、色や形の研究をしているデザイナーがそこに参加し、「うちの会社の製品はこうすべきです」と提案するわけですから、これは現実味がない話に聞こえてしまいます。

しかし、考えてみると、Appleのデザイナーであるジョナサン・アイブ(Jonathan Paul Ive)氏は、それをやっています。iPhoneを作っている人たちもそうです。最初に「うちの会社はどうしようか」と考える時、相当高い役職を担っているデザイナーがそこに参加しているわけです。

ですが、彼らはデザイナーですから、経営について発言するのではなく「顧客から見たら、こうなんじゃないか」という話をそこでします。日本の会社には、こういうことができるデザイナーがほとんどいません。

後編へ続く

 

講演者プロフィール

鷲田 祐一 教授

一橋大学大学院経営管理研究科教授

1991年に一橋大学商学部経営学科を卒業。(株)博報堂に入社し、マーケティングプラナーになる。その後、同社生活研究所、研究開発局、イノベーション・ラボで消費者研究、技術普及研究に従事。また2003年~2004年にマサチューセッツ工科大学メディア比較学科に研究留学。2008年に東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士後期課程を修了し、博士(学術)となる。ハイテク分野において、いわゆる「イノベーションの死の谷」現象がなぜ発生するか、克服には何が必要か、という視点から、ミクロ視点での普及学を研究。その延長としてユーザーイノベーション論、シナリオ構築による未来洞察手法、デザインとイノベーションの関係なども研究している。


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