データのじかん週報では、データのじかんの編集部内で会話されるこばなしを週1度程度、速報的にお届けいたします。
野島:来月の5日、左右社から「今さら聞けない DX用語まるわかり辞典デラックス」が出版されます! 年単位のプロジェクトで紆余曲折ありましたがデータのじかん編集部はもちろん、多くの方にご協力いただいたおかげで出版までたどり着けました。この場を借りてお礼を言わせてください。予約を絶賛受付中なので、読者の方もぜひAmazonをチェックしてみてください。
藤冨:おめでとうございます! 私も事前に原稿を確認させていただきました。DXの本質と基礎が分かりやすくまとめられていて、最初の一歩の方にはベストな本だと思いました。私も2021年7月からデータのじかんの編集部に外部ライター、編集として一部のコンテンツ制作に関わっていますが、当初DXについて抱いていた「勘違い」や「思い違い」などについて再確認させいただきました。また、これまで取材させいただいた越境者の方々も、「現場の理解」の齟齬について言及されることも多かったですよね。だから、データのじかんの読者の方々が職場に本著を一冊置いていただければ、より「本の効能」が大きくなるのではと感じました。
野島:ありがとうございます! そうですね。データのじかんは2017年にオープンしたのですが、当初から書籍化はメディアを運営するなかのマイルストーン1つでした。「出版自体への壁」と世の中の皆様に役立てて頂くために「今、どのような中身にするのか」といった悩みは常にありましたが、無事に書籍化できたこと、そして長年コンテンツ作りをしてくれたトツカさん、田川さんの活動が形になったのは素直に嬉しいです。
藤冨:私は外部編集者として、データのじかん以外の10以上のWEBメディアの編集、企画、原稿制作などに携わっていますが、書籍化を目指していて実現した媒体はほとんどありません。野島さんは書籍や現在のデータのじかんに対して何を描いているんでしょうか?
野島:最初から全て明確だったわけでも、今もはっきりと見えている訳ではありません。ただ現在はデータという分野で月80万アクセスがあるメディアに成長した以上、責任とともに、コンテンツとして「意味性と意義性」が求められると思います。こちらは株式会社ビービットの藤井保文氏に取材させていただいたときのキーワード「利便性と意味性」にも通じると思います。
藤冨:その取材は私もインタビュアーとして同席させていただきました。確かに単にSEOで順位を上げるとか、アクセスを増やすとか、CVRを向上させるといった観点での運用とは別次元の話ですよね。
野島:そうですね! もちろん、藤冨さんが言われた立ち上げ時期などは分かりやすい指標を追いかけるフェーズもありましたよ。ただ、今のデータのじかんとしては効率化や自動化、利便性向上といった「ハック的」なコンテンツよりも、データ活用やDXなどの「意味や意義」といった本質的な内容を伝えることが、データのじかんのフェーズだと考えています。
野島:そういう意味では、書籍という媒体は読者の方々にも届けるチャンネルとしてピッタリだなと改めて。リスキリングなど学ぶ姿勢が積極的な人は、WEBと同じくらい書籍で勉強する割合が大きいそうです。調査のn数が少ないこと、ITエンジニアという回答者属性を留意する必要はありますが、ITエンジニアのリスキリング調査からもその傾向が見て取れます。だからこそ、最初の一歩として「今さら聞けない DX用語まるわかり辞典デラックス」を活用していただきたいと思っています。
藤冨:WEBメディアのフェーズによって、媒体の役割やコンテンツの目的が変わるのであれば、いわゆる「中の人」も常にアップデートしていかなければならないですよね。実は私は今33歳なのですが、WEBメディアに関わるディレクター、編集、ライターとの飲み会では、自分たちの将来について不安視する声は少なくないんですよ。
野島:そういった声が。というと?
藤冨:会社員やフリーを問わず、WEBメディアのコンテンツ制作に携わっている人の多くが、SEOなどのWEBマーケティング領域での一部としてコンテンツ制作を何年間も行っています。ChatGPTなどのツールが次々と登場するにも関わらず「やっていることが変わらない」という停滞感が根底にあるのだと私は思っています。今回の話を伺って思ったのは、ある程度「ハック」は分かっても、意味や意義を含む「ディテール」をコンテンツに反映できない、する機会がないというのがつながるのかなと。
野島:なるほどですね。以前も話があがりましたが、ChatGPTは確かに情報を収集するのには便利ですよね。コンテンツ制作における利便性も増しますし、ハックできる人も増えると思います。ChatGPTへの期待とその裏にある怖さは、「Google検索」や「Wikipedia」などが生まれた時と同じような感覚なのかもしれません。ChatGPTで作った文章が世の中の全ての情報ではないですし、作られた文章についてどう活用するかが人間が考える必要がありますよね。要は人間が考えるスタート地点が変わった(だけな)のかなと感じます。一方で「一次情報を取得する力/まとめる力」は、どのフェーズであっても需要は高いと思いますよ。
藤冨:なるほどですね。野島さんはデータのじかんの成長曲線に応じて、どのような意識で業務に臨んでいましたか?
野島:偉そうに、ドヤ顔して言うレベルではないのですが。ユーザーが「何を通して」、「何を見るか」を意識することがいつでも大切ですよね。WEBメディアなのか、書籍なのか、だけでなくデータのじかんという媒体そのものを通して、どんな読者の皆様に「何を見ていただくか」を模索しています。本来のSEOの目的も、「ユーザーにとって最適なコンテンツ」をGoogleというレンズを通して、上位表示するのが目的。その本質にコンテンツの種類と届ける媒体はあまり関係ないと思います。それに多くのオウンドメディアという体裁は、その答えを見つけるためのPDCAを意外と回しやすいと思うんですよね。
藤冨:えっ!? 意外ですね。「今の環境ではなにもできない」と言う若手は少なくないんですが……。
野島:例えば、データのじかんであれば一人の顧客をリサーチする「N1分析」がかなりしやすいんですよ。「取材」という大きなコンテンツがありますからね。取材対象者が私たちにとってN1であるケースもありますし、取材対象者にとってのN1が私たちと共通する要素も少なくありませんから。
藤冨:確かにそうですね。コンテンツ制作そのものが、ニーズを理解する活動なんですね。
野島:オウンドメディアやコンテンツマーケティングを実施する最大のメリットは、マーケティングにおける幅広いバリューチェーンを比較的小さなサイクルでできることだと考えています。極端に例えると、自分でイチからつくったコンテンツをぶつけて、前後のコミュニケーションをもとに、世界の反応を分析できるんです。マーケティング領域は幅広いといえど、なかなかこんなに裁量と自由度を持ってできる仕事はないかも。やることは多いですが(笑)
藤冨:勇気を貰えるお言葉ありがとうございます。それこそ、コンテンツ制作の本質や意義、意味を理解して日々の業務に臨む必要があるのだと思いました。私も含め、同業者たちにも今回の記事を伝えさせていただきますね。
データのじかん編集長 野島 光太郎(のじま・こうたろう)
広告代理店にて高級宝飾ブランド/腕時計メーカー/カルチャー雑誌などのデザイン・アートディレクション・マーケティングを担当。その後、一部上場企業/外資系IT企業での事業開発を経て現職。静岡県浜松市生まれ、名古屋大学経済学部卒業。
データのじかん編集 藤冨 啓之(ふじとみ・ひろゆき)
経済週刊誌の編集記者として活動後、Webコンテンツのディレクターに転身。2020年に独立してWEBコンテンツ制作会社、もっとグッドを設立。ライター集団「ライティングパートナーズ」の主宰も務める。BtoB分野を中心にオウンドメディアのSEO、取材、ブランディングまであらゆるコンテンツ制作を行うほか、ビジネス・社会分野のライターとしても活動中。データのじかんでは編集・ライターとして企画立案から取材まで担う。1990年生まれ、広島県出身。
(TEXT・編集:藤冨啓之)
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