これまでの人事事業はKKDが頼りだと言われていました。
KKDとは、「勘・経験・度胸」といういたって人間味溢れる三拍子から構成される属人性が高い、というか属人性そのもののような指標であり、温かみと根性論がある種のアルゴリズムであるかのように受け入れられていた昭和の香りを感じられる反面、データ・ドリブンを前提としたHRテクノロジーとは対極的な位置付けになります。
直接売り上げに貢献することがほとんどない人事部門では、データ活用のために大掛かりな投資を行い、環境を整える、というところにたどり着きにくい上、経験豊富なベテラン人事部隊はデータによるヒューマンリソース分析に対して否定的な態度を示すことも珍しくないため、HR分野ではテクノロジーの導入が遅れていると言われています。
その一方で、データを分析することでわかってきたことも数多くあります。
例えば、とある求人案件に対して、男性の応募者はジョブ・ディスクリプション(求人票)に書かれている必要スキルの60%程度を自分が満たしていると考えた場合、躊躇なく応募することが多く、反対に女性の応募者は必要スキルが100%一致していない場合、応募しないことの方が多い、という傾向があることが明らかになりました。これはつまり、求人案件の書き方を変えることで、女性の応募者数を増やすことが可能な場合もある、ということを示しています。
業務の棚卸しを綿密に行いジョブ・ディスクリプションを丁寧に作り込み、各チームが必要としている業務や個人に求められるスキルを明確に定義することで解決できる問題も多く存在します。自社のジョブ・ディスクリプションが他と比較して、どのくらいのクオリティーなのか、というのは特に書いた本人には見えにくいものですが、Findy Scoreなどのサービスを活用すれば、ジョブ・ディスクリプションの質をスコア化することが可能となり、さらに質を向上させるためのアドバイスを受けることも可能です。
また、ジョブ・ディスクリプションの正確さは、応募数だけでなく、採用後にもその仕事に対するジョブ・フィット率にも影響を及ぼします。Havard Business Reviewの調査によると、個人のスキルや特性と職務で求められているスキルや特性の一致率を示すジョブ・フィット率が高い場合、低い場合と比較して、生産性に2.5倍の差が生じるそうです。
ジョブ・ディスクリプションを丁寧に書き出していくことは、ジョブ・フィット率を向上させるだけでなく、社内に存在している業務を明確化するという働きもあり、タスクの共有や重複の省略、外部への委託を可能にしてくれる場合もあり、リソースの有効活用が期待できます。
Findy Scoreなどのツールを活用し、一部分だけでもHRテクノロジーを導入し、脱KKDに向けて少しずつ動いていくことも現実的な施策かもしれません。
HRテクノロジーを導入すれば、例えば、RPAなどのツールを使ってこれまでヒトのリソースが必要だった業務が自動化できる、などのメリットがあり、初期段階ではさほどの成果を感じない場合でも、長期にわたりトライ・アンド・エラーを繰り返すことで精度が上がっていく項目も多くあることは恐らく確かです。
しかし、それだけでは企業文化にマッチした人材が入社し、適切な部署に配属され、相性の良いメンバーと共に長期に渡り勤務し続けることができるかどうかの保証はないため、多くのコストとリソースをかけて今すぐにHRテクノロジーを導入するべきである、と経営陣を説得することは難しいかもしれません。経営陣がKKDを重んじている場合はなおさらです。
とは言え、現状のKKDを中心としたアプローチでは、どこまで言ってもヒューマンリソースに関する知見データが会社の資産として累積化することがなく、経験豊富な担当者が会社を去るタイミングで貴重な会社の資産が失われてしまうことになります。
これは会社にとっても、そして社会にとっても大きな損失です。
では、どんな選択肢が現実的でしょうか?
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