データサイエンティストといえば、最もセクシーな職業とも言われ、いたるところから引く手数多な存在であり、難解な課題に対してデータを元にスマートな解決策を提示してくれるスーパーマン…という印象が強い世の中ですが、実際にデータサイエンティストになってみるとそうキレイゴトばかりの世界ではないようで…。
「Here’s why so many data scientists are leaving their jobs(データサイエンティストはなぜ辞めてしまうのか?)」というブログ記事から、その仕事の現実を垣間見てみましょう。
「データサイエンティスト」という言葉自体がバズワード化してしまっている今、この職業についてまずは正確な定義を確認しておきましょう。
一般社団法人データサイエンティスト協会のホームページによると
膨大なデータ(ビッグデータ)から、ビジネスに活用する知見を引き出す中核人材
と説明があります。
つまり、ウェブサイトの解析ツールやPOS、さらには公的機関による統計情報や携帯電話会社のモバイル空間統計に至るまで、あらゆるデータを元にしてビジネスに役立つ戦略やアイディアを紡ぎ出す、ということです。
その重要性は、これまで人の「勘」や「経験」が少なからず重要視されていた分野にも、データによるエビデンスがある戦略立案が可能になるという点にあります。
たとえば、あるレストランでは毎日の「おすすめ料理」を従業員の勘や経験ではなく、気候や周辺の観光客の人数、年齢層、過去の売上データなどを元にして算出するようにしたことで売上が伸びたという事例もあるのです。
ここで、冒頭に紹介したブログ記事「なぜデータサイエンティストは辞めてしまうのか」(原題:Here’s why so many data scientists are leaving their jobs)に戻って、彼ら自身の悩みを見てみましょう。
この記事には下記の4つの見出しがあります。
ひとつずつ、その実情を見てみましょう。
これがまさしく「スーパーマン」のイメージとのギャップです。データサイエンティストの採用を決めた役員は「スーパーマン」を期待しているわけですが、実際にはデータサイエンティストの仕事は地道なものです。
まずは社内にあるあらゆるデータの整理、ダッシュボード作り、そして処理と分析… 「画期的なソリューション」のようなものはすぐには出てきません。
すると、スーパーマンを期待していた役員はもちろん、同僚たちにさえも「期待していたほどの働きはしてくれないようだなぁ…」と思われてしまうわけです。
ちがうから! そもそも僕らはスーパーマンじゃないから!データを分析するだけだから、空とか飛べないし、という叫びが聞こえてくるようですね…。
データサイエンティストの仕事は「データから、ビジネスに活用する知見を引き出す」ことですが、その「知見」を活かすかどうかを決めるのは別の部署だったりします。
活かされなければ仕事の面白みはありませんし、なにより「あいつ仕事してないんじゃないかな?」という視線は強くなる一方。
まずは社内の有力者に気に入られて、自分の仕事を認めてもらう必要があるんですね。
本来、データサイエンティストの仕事はなにかビジネス上の目的を達成するためにあるべきですが「データサイエンティストならこのデータも分析できるよな?」と便利屋的に使われてしまうことも多いようです。
これ、データサイエンティストに限らず社内専門職を経験したことのある方は覚えがあるのではないでしょうか?
社内政治に通じる部分ですが、本来はビジネス戦略の根幹にいるべきデータサイエンティストたちが「データ解析室」みたいな部署に隔離されてしまうことも多いようです。
事業部門からは小煩い奴らだと睨まれ、役員からは穀潰しのように扱われ、しかも仕事の面白みも感じられない… という三重苦に悩んでいるデータサイエンティストのつらさが伝わってきます…。
意外と泥臭いデータサイエンティストの現実をのぞき見してみました。新しい職種であるがゆえに、その実力を発揮できる環境をなかなか得られないという現状があるようです。
本来、データサイエンティストは流行りで採用するようなものではなく、自社のビジネス課題を解決し、さらなる発展のために欠かせない人材のはずです。
データサイエンティストの採用をお考えの方は、どうぞ計画的に環境を整えてから、お願いしますね。
(塚岡雄太)
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