2016年に制定された「官民データ活用推進基本法」をご存知でしょうか。行政情報を誰でもダウンロード・加工できるオープンデータとして公開することで、経済の活性化や行政の効率化を目指しています。
このトレンドのきっかけとなったのは東日本大震災でした。最新状況についての問い合わせが公的機関に集中したことで、誰もがアクセスできる一覧性を備えたデータの必要性が認識されたのです。
2020年1月時点で668の自治体がオープンデータに取組んでおり、これは約1年前に比べ7割増の数値です。都道府県や政令都市に限れば取り組み率は100%に達しています。オープンデータを利用したアプリ開発も官民の枠を超えて進んでいます。
あなたの周りでも着々と実用化が進んでいるオープンデータ。日常生活に役立つものからあっと驚くユニークなものまで、官民のオープンデータ活用例をご紹介します
自分の住む地域のごみ分別ルールを検索したり、収集日の通知を受け取れるアプリです。ごみ分別ルールは自治体ごとに異なるため、引っ越してきたばかりの人に便利なのでは。また、収集日の通知機能は古くからの住民であっても重宝しそうです。こうしたゴミ分別アプリは福井県だけでなく様々な自治体で開発されています。
スマートシティ構想を推進する会津若松市が開発したスマホ用アプリ「ペコミン」は、地図上にお店や公共施設の基本情報が表示されるいわばGoogleマップのローカル版。利用者同士がコメントやリアクションで交流できるローカルならでは機能も。また、火災や熊の出没情報といった安全情報の通知を受け取ることもできます。
奈良先端科学技術大学院在学中(2016年当時)の学生が開発した「4919 for Ikoma」は、生駒市主催のアプリコンテストの最優秀賞に選ばれた食育アプリ。生駒市がオープンデータとして公開する給食献立とそのアレルゲン情報、栄養素、カロリーなどをチェックできます。アレルギー持ちの子供の強い味方です。
京都府と京都市が開発した、ユーザーのニーズに合わせてカスタマイズが可能な多言語対応観光アプリです。興味のあるエリアやアクティビティの種類を設定すると、設定に見合ったおすすめ情報が表示されます。観光スポットはもちろん、その時々のイベントや気象情報などのライブ情報が満載。また、京都市が開発した乗換情報アプリと連動しており、府内のスムースな移動をサポートします。
オープンデータの理念は「誰でも自由に利用や加工ができること」で、経済活動の促進も目標に掲げられているため、民間企業による商用利用も可能です。顧客サービスの向上のため、また新しいビジネスモデルの開拓を目指して、様々な試みが登場しています。
子供のいる世帯にとって校区は物件選びの重要な条件になりえますが、校区データを公開している自治体は少なく、正確な校区を知るためには直接自治体に問い合わせる必要があります。
そんな中、福岡市が公開している校区データを利用して、不動産仲介会社「駅前不動産」が開発したWebアプリが「不動産仲介サービス」です。このWebアプリを使用した同社のウェブサイトでは物件を検索すると検索結果に校区情報が表示され、また地図検索では校区の境界を重ね合わせることもでき、校区に基づいた物件選びをサポートしてくれます。
今や衛星画像でさえ無料のオープンデータとして入手できる時代。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の人工衛星「だいち2号」から送信される衛星画像は、「Tellus」という衛星データプラットフォームで一部が公開されています。これに着目したSagri株式会社は、衛星写真から土壌の水分量、日照量を解析し農家に提供することで、効率的な農作業や品質管理をサポートしています。Webアプリ、スマホアプリの両方からの利用が可能です。
現時点では地域情報や観光情報アプリへの応用が盛んな自治体のオープンデータですが、今後はよりイノベーティブな利用方法や新規ビジネスの開発が期待されています。無料のオープンデータからビジネスチャンスが掴めるこの状況は、データ版ゴールドラッシュと言っても過言ではないかもしれませんね。
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参考リンク: 地方公共団体のオープンデータの推進 オープンデータ活用事例集
(佐藤ちひろ)
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