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生放送中でもAIが不適切な画像をわずか2フレームで自動マスク処理!?AIの進出で放送業界の働き方はどう変わる?

         

ますます活躍の場を広げている人工知能(AI)。あらゆる場所でその存在を目にするようになっていますが、身近なところでは放送業界にも浸透しつつあります。

例えばテレビ制作の編集現場で、これまで大勢の人手と膨大な時間が必要だった作業が、AIを使うことで短時間で完了できるようになりました。

実は相性が良い放送業界とAI。具体的にどのようなイノベーションが登場しているのでしょうか。いくつか例を見ていきましょう。

生放送中に同時進行で文字マスキングが可能に

現在ドイツのベルリン在住の筆者は、一時帰国するたびに東京の街のおびただしい視覚情報に圧倒されます。看板、広告、のぼりやサインに文字が所狭しと並ぶ様は、ヨーロッパではまず見かけない光景です。

こんな文字情報の洪水の中で、テレビの生放送を行わないといけないとしたら?不適切な文字情報が映り込んで、放送事故が起こってしまう可能性とは常に隣り合わせと言っても過言ではないでしょう。

こうした場面に対処できるように、ネットスマイル株式会社、株式会社テレビ朝日サービス、株式会社朋栄の3社によって開発されたのが、人工知能による文字の自動マスク処理。うっかり画面に映り込んでしまった文字を瞬時に検知し、マスク(覆い)をかける技術です。

文字検知に必要な時間は0.5フレーム、マスク処理やその他に2フレーム(1フレームは0.033秒)ですから、わずか約0.08秒で文字情報のマスキングが完了します。

人間の目では、これほど短時間で露出された情報を感知できません。これにより、テロップが看板の文字と重なって見えにくかったり、番組スポンサーの競合会社の広告が映り込んでしまうといったアクシデントが起こるのを防ぐことができます。

顔認証技術で残業時間激減?

テレビ局では、過去に制作した映像を再放送するような場合、出演者全員に許可を得る必要があります。これまでは大きなリソースを投入して登場人物を確認していましたが、この方法だと時間と人手がかかるうえに、人違いや見落としなどのミスが起こりやすいという問題もあります。

NECが開発した「登場人物検索ソリューション」は、顔認証技術「NeoFace」を採用し、登録してある登場人物の顔を作品中で自動的に検索してくれます。米国国立標準技術研究所(NIST)のベンチマークテストで1位に輝いたこの技術は、人物がメガネやマスクを装着していたり、正面ではない角度でも照合が可能です。

これまで大きなリソースを割いていた作業にAIを使用することで、編集スタッフの残業時間は大幅に削減されるかもしれませんね。

AIアナウンサーも登場

報道機関向けにAI技術を提供するSpecteeが開発したのは、なんとAIアナウンサー。このAIアナウンサー「荒木ゆい」は、深夜早朝の時間帯に突発的にニュースが発生しても、原稿を投稿するだけでニュースを読み上げてくれます。

実際のアナウンサーに読まれた約10万件のニュース音声を、同社が開発したAIエンジンに機械学習させ、自然なアクセントや発音でニュースを読めるようにプログラミングしています。

2020年4月には、新型コロナウイルスの感染拡大予防のため、各種放送局に荒木ゆいを当面のあいだ無償で提供すると発表されました。活用例としては、高知県のフジテレビ系列テレビ局「高知さんさんテレビ」が荒木ゆいを番組アナウンサーとして採用しています。

ちなみに荒木ゆいのプロフィールは、

「栃木県出身の27歳、東京の私立大学を卒業し、大手テレビ局のアナウンサーに。その後独立しフリーとして活躍」

と、それなりに現実的な設定になっています。

サンプル音源を聞いてみたところ、やはり独特のAIっぽさは否めないですが、すでに音楽の分野ではボーカロイド「初音ミク」は長年に渡りそれなりの存在感を保っていますし、AIアナウンサーもアナウンサーの選択肢の一つとして定着する可能性は十分にあるのではないでしょうか?デザインの分野でもAIを使った画像編集技術は年々向上していますし、ディープフェイクと呼ばれるAIを駆使して作成したフェイク動画は社会問題にもなっています。また、作曲などの分野でも目覚ましい進歩を遂げています。

AIアナウンサーがブレイクするのか、後続は登場するのか、それともそこは人間らしさを残したいと人が判断する部分なのかについては今後見守っていきたいところです。

AIを味方につけるには

過酷な労働条件で話題になりがちな放送業界。AIの応用によりこうした業界の体質改善が期待されています。一方で、AIの活用が雇用抑制に繋がる可能性が指摘されることもありますが、これはどの業界にも言えることであり、むしろAIの仕事の幅が広がるにつれ、人の役割はむしろより重要となり雇用は増える、とする説もあります。いずれにせよ私たちの働き方や雇用形態も否応なく変化していくでしょう。それに対応するメンタリティーを保てるかどうかが私たち一人一人の明暗の分岐点になるのかもしれません。

「AIが非生産的な作業をしてくれるおかげで、我々人間は創造的な仕事に集中できる」という仕組みに今後シフトしていくことは明白です。「AIに仕事を奪われる」ことを心配するよりも「AIにいかに仕事を任せるか」を考え、AIの方が得意なことはAIにやってもらう決断を早めにしてしまった方が社会全体としての効率化、ひいてはより人間らしい暮らしや社会の構築に繋がる可能性は高いのではないでしょうか?

【参考リンク】
・ 【Inter BEE 2019】見えてきた「放送×AI」「映像×AI」の具体像 画像検出、文字起こしなどによる編集の効率化からカメラワークの自動化、AIキャラクターまで多様な活用方法を提示テレビの生放送でAIが文字をマスク処理、2フレームで事故を防ぐ

佐藤ちひろ

 
データ活用 Data utilization テクノロジー technology 社会 society ビジネス business ライフ life 特集 Special feature

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