





・ブラウザのプラットフォームの奪還(Microsoft)
・スマホでのプラットフォームの構築(Apple)
・新規デバイスの導入とプラットフォームの確立(OpenAI)
・特定の目的に特化した「入口」を構築して、Google検索をバイパス EC(Amazon)、SNS(Facebook、Instagram)、動画(YouTube)、ショート動画(TikTok)
・テック型:フィジカルAIでWFM(World Foundation Model)を構築し、AIの世界におけるプラットフォーマーを目指す(NVIDIA、Tesla)
・デジタルコンテンツ型:インターネット上に独自の「入口」を構築し、アニメ、映画、音楽などのデジタルコンテンツを配信(Netflix、Amazon prime)

これは、あくまで私の見解なので、分類方法には様々な意見があるはずです。例えば広告ビジネスはターゲティング広告なので、ユーザー追跡に依存しています。したがってユーザーのプライバシー保護とか倫理観を突くことで攻撃できますし、反トラスト法などの法規制で国家権力を活用する方法もあるでしょう。

まぁ確かにiPhoneは、Androidスマホよりはるかに安全性が高いと宣伝してますね。

現実には、Googleの影が薄いAIビジネスユースを狙うのがビッグテックの戦略の王道ですが、ここは今や群雄割拠が入り乱れるレッドオーシャンの世界ですね。なお、前述したフィジカルAIのWFMに関しては、次回から詳細に説明します。先に特徴的な企業の対抗策を話します。


まずOpenAIですが、今では巨大企業となっているだけあって、予想以上に多方面に展開しているようです。MSと提携しているのでビジネスユースはMSに任せるのかと思っていたのですが、なんと「AIエージェント導入支援サービスFrontier」を2月から開始しました。日本ではソフトバンクとの合弁会社「SB OAI Japan」を設立してサービスします。
また、ヒューマノイドシステムに取り組む研究者を採用し、ロボティクス分野での取り組みを加速させているとの報道もあります。

へ~意外だな。各企業へのAI実装なんて、最も手間がかかる泥臭い業務なんだけどな。

忘れてましたが、年初にOpenAIのCFOが、ブログで「AIの実験段階は終了した。2026年を実用化の年と位置づけ、AIツールの構築から、実際のビジネス運営への組み込みへとシフトする」と宣言していました。
その他にも、無料版やChatGPT Goという安価なプランには広告を表示すると発表をしています。また前回2026年中にPCとスマホに代わる「第3のコアデバイス」として、画面のない音声・環境認識型のウェアラブル端末の投入を計画している、という噂話を紹介しました。しかし現時点では様々な憶測が流れている状況なので、ここでの紹介はやめます。

なんだか今までと全く違って、なりふり構わずなんでもやっている感じだな。まぁ天文学的な金額の借金があるから当然か。


次は独自の戦略で挑んでいるソニーです。実は、ソニーもプラットフォーマー対策を着々と進めているようなのです。2025年12月に、ソニー銀行がアメリカでステーブルコインをアメリカドル建てで発行すると発表しました。ソニーグループは年間売上12.3兆円、営業利益1.5兆円と絶好調ですが、今ではその6割が、ゲーム・アニメ・映画・音楽などのエンターテイメント事業になっています。そして、利益の源泉であるデジタルコンテンツを流通させているのが、Googleなどのプラットフォーマーです。したがって、売上の一部がプラットフォーマー側に決済手数料やプラットフォーム利用料として抜かれ、顧客データやロイヤルティ(Loyalty)はプラットフォーム側に蓄積されているのです。

さっきのGoogleとは逆の立場だから当然ですね。

クレジットカードの手数料は通常2〜3%程度なので、ソニーなどの利用企業が年間数兆円規模の売上だと、なんと数百億円規模の損失にもなるのです。

そうか。それだけ大きな金額だと、必要経費だったとしても払いたくないだろうな。でも、そのステーブルコインとやらを発行すると、プラットフォーマーになれるんですか?

前回の講義で簡単に紹介しましたが、ネット上で使えるステーブルコインとは、ドルなど法定通貨の価値に連動する暗号通貨のことです。自社発行のドル建てステーブルコインで決済すれば、ソニーの売上の3割を占めるアメリカでのコンテンツ事業の仲介コストを、大きく削減できるのです。

そうなんですか。でもそれは、ソニーが新しい経費削減手法を見つけたという話ですよね。

そんな単純な話ではありません。ステーブルコイン発行の真の狙いは、どうも経費削減だけではなさそうなのです。もちろんコンテンツ事業の売上が伸びるほど、クレジット会社やプラットフォーマーへの仲介コストも膨れ上がります。しかしその問題の本質は、コンテンツ流通の経路にあるのです。つまりアニメや音楽などを楽しんでくれるユーザーに、デジタルコンテンツを届けるための流通経路が、プラットフォーマーに抑えられていることが問題の本質なのです。

なるほど、例えば米作り農家の米は農協を通さないと消費者に届かないので、米の価格が高止まりして農家の手取り金額も減ってしまう、みたいなもんか。じゃ直販すりゃいいじゃないですか。

分かりやすい例えですね。そうなのです。もちろん「コシヒカリ」や「新潟県産」みたいなブランド価値が高くないと、消費者には信用されないので直販も難しくなります。

そうか、昔は安いゲームを探すとクソゲーをつかまされるリスクがあったから、信頼性が高い任天堂やナムコみたいなメジャーブランドが売れるんだろうな。それがロイヤルティか。

現在は、YouTubeやAmazonプライムビデオみたいなプラットフォームを介して、ユーザーはコンテンツを消費しています。この場合、手数料が抜かれ、ユーザー情報とロイヤルティはプラットフォーマー側に蓄積されます。自社発行ステーブルコインだと送金コストが非常に低く、十円レベルのマイクロペイメントが使えます。これを利用することでソニーは、エンドツーエンドすべてを掌握できるコンテンツプラットフォームを手に入れることができるのです。

なるほどね。アメリカだとステーブルコインはメジャーかもしれないけど、日本はブロックチェーンみたいな暗号通貨だと、怪しげなイメージがあるから、しばらく利用されないだろうな。

まぁそうかもしれませんね。ただソニーは日本では別のアプローチを考えているようです。長くなるので、それは別の機会にでも。
「フィジカルAI元年」に続く
・IT界隈で覇権を強めるGoogleに対して、他のIT企業はECやSNSなどの専門分野に特化したプラットフォームや、Googleをバイパスする入口などを構築することで対抗している。
・AGIに特化してきたOpenAIは、2026年からAIエージェント導入支援などのビジネスユースに方針転換し、ロボティクス分野参入、ChatGPT広告表示等収益確保を急いでいる。
・ゲームなどのコンテンツ事業が中心のソニーは、自社発行のステーブルコインを利用することで、既存のプラットフォーマーを介さないコンテンツ流通経路を、構築しようとしている。
図版・書き手:谷田部卓
AI講師、サイエンスライター、CGアーティスト、主な著書に、MdN社「アフターコロナのITソリューション」「これからのAIビジネス」、日経メディカル「医療AI概論」他、複数の美術展での入賞実績がある。
(図版・TEXT:谷田部卓 編集:藤冨啓之)
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2026年となりましたが、今年は「フィジカルAI元年」となりそうです。
前回までは、まだ今年のキャッチフレーズは決まっていない、とか先生は言ってましたが、決まったんですか。
別にだれかが決めたわけではないですが、1月に開催された、世界最大級のテクノロジー見本市CESの情報が入ってきたのです。私は「ヒューマノイドロボット元年」かと考えていたのですが、それを包括する概念がCESで大きなムーブメントとなっていたようなのです。ただこのフィジカルAIについては、次回から別シリーズとして詳しく紹介します。今回は先に、前回の続きとなる「プラットフォーマーGoogleへの反撃」です。
そうでした。Googleの収益の柱だったネット広告が、AI検索の影響で縮小したので、得意のAIエージェントを利用して、ビジネスユースやECに進出することで、プラットフォーマーの地盤固めをしているという話でしたね。
そうなのですが、誤解するといけないのでキチンと説明しましょう。ネット広告が縮小した最大の理由は、アプリを利用してブラウザを使わないスマホユーザーの急増です。それと3割以上のユーザーが使っている広告ブロッカーの影響があります。つまりAI検索は、その残った数少ないブラウザ利用者から、さらにクリック数を奪っているのです。
そりゃそうですね。大半の人はパソコンなんて持っていないし、スマホでわざわざchromeなんか使わないか。ということは、ネット広告に頼ったビジネスモデルそのものが、崩れかけているんだ。
そうなのです。Googleのサービスは、検索連動型広告の収益に頼っているので、ビジネスモデルの構造問題といえます。モバイル利用時間の約90%はアプリ内なので、広告主はブラウザからアプリ内広告へとシフトしているのです。
もっとも、Googleの親会社であるAlphabetの年間売り上げは、史上最高額の4000億ドルとなりそうです。これはクラウドサービスやYouTubeが想定以上に伸びているためで、Google検索サービスの比率は全体の55.4%にまで減っています。
なんだ、Googleが傾いてきている、なんてことはないのか。
確かにグループ全体でみると好調です。なのでAIに莫大な投資ができるのでしょうね。しかも前回話したように、Googleは他のビッグテックより先手を打ち続けています。今回はまず、巨大プラットフォーマーが支配している市場に対して、他社がどのように対抗しているかを、独自にまとめてみたので紹介します。