講義の後は講義を行ったお二方にモデレーターとしてウイングアーク1st株式会社金融企画営業部の吉山潔氏を交え、座談会が開かれました。吉山氏が用意した疑問や参加者からリアルタイムで集計された質問を軸に、座談会の模様を一部抜粋してお伝えします。
荻野:とてもわかりやすい例があります。ある金融機関さんが為替の予測をしたいということで400個ほどのデータを持ってこられました。しかし、我々はそのようなデータはすでにチェックしているんです。またデータ分析の知識がない方が集めたデータは先行性・相関性に欠けておりそもそも使えないものが多い。AIにおいてもデータ分析の知識は前提として必要なんですね。
なのでそのようなデータの収集は我々プロに任せて、現場でしか得られないデータを準備いただいた方が有益だと考えています。例えば、コールセンターで働く社員さんの声に有用なヒントが埋まっていることがあるんです。
伊藤:そうですね。「データは21世紀の石油」という言葉がありますが、「原油」と表現した方が正確だと私は考えています。つまり精製して使える形にしなければならない。目的に合致したアルゴリズムを選択するのが大事なんですね。データの準備においても“何をどのくらいの精度で達成したいのか”を見据えて合目的的に取り組むことが重要なのではないでしょうか。
荻野:現状、AIの特性によってできること、できないことがあります。だからまずは現状の把握をしてください。そこで見つかった課題にはAIが対処できるものも含まれているはずです。あまりに期待値が高すぎると答えることが難しい場合もありますが、仕事の省力化やスピードアップには役立つことが多いです。例えば大量のデータから最も類似した2つを選ぶ作業はAIが最も得意とするところ。そこに合致する課題があればAIが大きく貢献できるかもしれません。
吉山:設定した課題に対して支援を行うことが大事だということですね。現状のAIと世間の期待値にはギャップがあるのでしょうか?
伊藤:AIが世の中に浸透し始めた結果「まだまだ人間に劣る部分もあるんだな」と下方修正されつつあるのが現状だと思います。しかし、人間と同等それ以上の効果をAIが発揮できるケースもあります。そのような成功例を粛々と積み上げていきたいと思います。
ビジネスのゴールとデータサイエンティストのゴールが食い違うと不幸な結果に陥りやすいのでその二つを一致させる作業には根気強く取り組むようにしています。
荻野:弊社ではアルゴリズム化してAIにデータクレンジングを任せています。なので人手は費やしていません。実務では、毎日ノイズを含んだデータを処理する必要があります。また、金融では10年分のデータを取り扱いたい場合もあります。そのクレンジングを人間が手作業で行うのは不可能といってよいでしょう。そこを統計的手法でクリアできるかどうかは企業のレベルを見抜くポイントの一つだと思います。
伊藤:私も荻野さんと同じく純粋なクレンジングを手作業で行うのは無理だと考えています。ただ、顧客へのヒアリングやフィードバック、情報の共有などアルゴリズムを組む前のプリプロセスにはそのくらいの時間はかけているかもしれません。そこに時間を費やすことで理想的なモデルを構築するためのガイドラインが得られると考えています。
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