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ビッグデータ、IoTなど、ビジネスシーンには日々新しい言葉が登場します。これらの言葉は、今や専門書の中のものではなく、一般的なビジネスパーソンもある程度の意味を押さえておかなければなりません。
そこで今回は、ビッグデータの概要を理解できる本をご紹介します。今回紹介するのは、岡村久和氏監修『IoT時代のビッグデータビジネス革命(インプレス、2018年)』という本です。
まずは、本書の目次を掲示します。各章の具体的な内容については、以下で要約をまとめています。
第1章 ビッグデータを正しく理解しよう
第2章 スーパーリーダーによる産業別ビッグデータと次世代産業指南
第3章 ビッグデータビジネスを支える”知恵と教育:究極の成功例”
第4章 ビッグデータがもつ可能性とそのリスク
この章では、ビッグデータとは何かについて丁寧に解説しています。
説明の冒頭では、「ビッグ(Big)」と「ラージ(Large)」の違いの説明もされていました。Largeは、物理的に大きい、ものさしで測れる客観的な「サイズ」を示すものであり、それ以外の価値をまったく説明していない「大きい」という意味になります。対して、Bigという言葉は、自分から見て、つまり主観的に考えて「つかみどころのない大きさ」「自分より明らかに大きいがその大きさがわからない」「ものさしなのか、体重計なのか、長いのか、高いのか、太いのか、重いのか、計測する道具も選べない大きさ」などの意味を持っています。
ビッグデータというと「大量のデータ」という意味だと思ってしまいがちですが、本書ではビッグデータは単なる大量なデータではない、と明確に否定し、本当の意味でのビッグデータを定義しています。本書には以下のように書かれています。
ビッグデータは、(中略)データの量であるとか、サイズを意味していません。ビジネスの判断に必要な「さまざまな形をした、さまざまな性格をもった、さまざまな種類のデータ」を意味し、それらを駆使してビジネスの効率や効果を上げることができる情報と、その情報の使い方のことを表すのです。
世間一般的には、「ビッグデータ」「オープンデータ」「AI」など各々がバズワードとなっており、別個のものと捉えがちですが、それぞれ「手段」であることに注意しましょう。あくまでも目標は「何かを意思決定する」ということです。ビッグデータ等はその目標に対して処理判断するための判断材料として存在しているのであって、ビッグデータの収集自体を目標としないよう気を付けなければなりません。
第2章では、おもに産業別のビッグデータの使い道について説明しています。
ビッグデータを使った街づくりとしては、iKaaS(IoTデバイス等のセンサーから収集したデータによって生成された、知識を提供するマルチクラウドプラットフォーム)の実証実験として、タウンマネジメントに活用する試みが始まっています。また6次産業化や商店街活性化などについても、ビッグデータの利用が期待されています。
医療分野では、地域包括ケアシステムと健康寿命の増進のために、社会の仕組みを整える必要があります。そのためにはマイナンバー制度の法整備や医療等IDの進展が必要ですが、これには国民の理解も重要になってきます。
金融業界に関しては、キャッシュレス化の進行によって電子取引の金融取引数が増え、ビッグデータとして蓄積されてきています。近年、「フィンテック(金融サービスと情報技術を結びつけたさまざまな革新的な動き)」が話題になっていますが、これは金融業界に膨大な量の顧客データが集まってきていることの表れといえるでしょう。
電力業界におけるアセットマネジメント(経営資源や設備などの資源の管理)も、ビッグデータです。事業運営のための設備は、社会の新たな変化やIoTなど最新技術を取り入れながら変化します。電力事業経営の基本は、この設備を建設、保守、リプレースしていくことであり、これらの蓄積は有益な情報となるのです。
災害と復興分野については、アメリカを襲った2005年8月にアメリカ・ニューオリンズを襲ったハリケーン・カトリーナに関しての復興サイクルの例を紹介しています。
これによると、復興サイクルには「回復期(During)」「復興期(After)」「準備期(Before)」の3つがあり、ステージごとに求められる情報も異なります。
回復期の最初がハリケーン発生中から直後にかけてです。この時期は、市民から水、食料、家など生活必需品の要求があるでしょう。これらがある程度確保されると、次は「復興期」です。この時期は心のケアや教育、仕事創造などが求められるようになります。その次に来るのが「準備期」であり、この頃になると復興事業は「次の災害」に備える準備作業になってきます。このように復興サイクルの各時期ごとに求められるデータが異なるため、「どのデータを」「どのタイミングで」使うかという、ビッグデータの正しい使い方が求められます。
第3章では、ビッグデータを用いたビジネスの成功例について紹介しています。
1つ目の成功例は、「日本の半導体の生き残り戦略」です。半導体メーカーである「ルネサスエレクトロニクス」は、もともと日立製作所と三菱電機の半導体部門が統合した「ルネサステクノロジ」と、「NECエレクトロニクス」がさらに統合してできた会社です。別会社同士が統合したわけですから、仕事の進め方が違います。いかにして仕事の仕方の整理と業務の仕組みづくりをおこなっていったのか、ストーリー形式でわかりやすく書かれています。
2つ目の成功例は、「ビッグデータ時代の『学』の存在意義」です。ビッグデータは多様な領域からの数値データの集合体ですが、ビッグデータそのものから「暗黙智(原文ママ)」の性格を把握することが可能です。産業のイノベーションには「暗黙智」が必要となります。少々学術的でわかりにくい箇所ですが、新しい技術の製品化に成功している例が多数載っており、読んでいて参考になる部分も多いです。
この章では、ビッグデータが持つ可能性とリスクについて説明されています。
ビッグデータによって私たちは様々な恩恵を受けることができますが、誤用されてしまうリスクもありえます。具体的には、個人のプライバシーの侵害やマイナスの結果につながるビジネスの決断、犯罪行為など。これらリスクを適切に軽減しつつ、価値を最大化するためのデータの使用法を理解することが必要です。また、数多くのテストを行い、成功しなかった場合にはそれを切り捨てて次の実験に移れるような「変化を受け入れ、失敗は恐れずに受け入れる体制」を確立することが求められます。
この本はビッグデータを知るためには十分すぎるくらいの情報量があります。
ビッグデータに関する解説に100ページ程度使われていることからも、その網羅性はわかっていただけることでしょう。ビッグデータだけではなく、今話題となっている「IoT」「AI」「オープンデータ」などの用語にも触れられており、参考書として読んでおきたい1冊です。
第2章および第3章では、それぞれビッグデータの事例がまとまっているので、実践的。筆者の旺盛なサービス精神からか、ビッグデータとは直接関係しないテーマに関しても深堀りしている箇所もありますが、ビッグデータを理解するうえでさらに見聞を広めることになるので、ぜひ読み飛ばさずに読んでいただければと思います。
本書の定価は2000円+税。この価格で多くの情報を得られる本なので、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか?
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(安齋慎平)
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