吉山 中国はキャッシュレスの利便性をどんどん高めていったことで、社会全体に広がったわけですね。そうだとするならば、日本がキャッシュレス化を進めるにあたって、中国のプロセスを理想もしくはモデルとしてとらえているのでしょうか。
永井氏 ご質問の意味は、「プラットフォーマーと呼ばれる事業者がすべてのサービスを一手に引き受ける方がよいのか、それともビジネス提供者がキャッシュレス業者と提携して広げる方がよいのか」ということですね。それは国によって進め方が異なるのではないでしょうか。いずれにしろ、消費者が安心して便利に使えるキャッシュレスであることが大前提です。
小暮氏 中国とは、国民の個人情報に対する認識が大きく異なっています。たとえば、知らない番号からスマホに電話がかかってきても日本ではとらない人が多いですが、中国人はあまり気にしないでとるそうです。その電話が投資の勧誘だったとしても、内容が自分に役立つ情報だと思えば中国では受け入れる人が多い。この話に代表されるように、中国における利便性向上の施策は、参考にする点を慎重に見極める必要があるでしょう。
吉山 確かに、安全性とくに個人情報の扱いについて、中国はいわば“表裏一体”で乗り越えている感じがしますね。
小暮氏 日本人は一般に、品質に対して非常に敏感です。個人情報に対しても同じ傾向が見られます。
永井氏 たとえば、インターネットのブラウザで検索ワードを打ち込むと、それに関連した広告がリコメンドとして掲出されますよね。これを「個人情報を抜かれて気持ち悪い・違和感がある」とするか、「なるほど便利だ」と思うかの違いとでもいうのでしょうか。
吉山 では、中国で普及が進んでいるQRコード決済はいかがでしょう。日本のキャッシュレス社会もQRコード決済を基本に進んでいくのでしょうか。
永井氏 QRコード決済ありき、ではありません。タッチ式とされるNFC(近距離無線通信規格)もこのところ進化しています。QRコード決済は確かに初期投資が少なくて済むという大きなメリットがありますが、あらゆる決済手法を検討、サポートしていきます。
小暮氏 QRコード決済の課題はスマホありきという点。スマホを持っていない人は当然のことながら利用できません。その点、NFCは子どもから年寄りまでみんなが手軽に使えます。それぞれの得意とする利便性で消費者に選ばれていくのではないでしょうか。
永井氏 NFCは手軽、クレジットカードは高額決済でも安心、QRコードは地方でインバウンド需要を取り込みたい店舗など、利便性と目的別ですね。もっといえば、生体認証のようなそもそもデバイスを持たない決済方法もあります。今後信頼性が高まれば実現は十分あり得ます。
(後半に続く)
(ライター)
小島 淳(こじま・じゅん)
1965年仙台市生まれ。株式会社エンジン代表取締役/クリエイティブ・ディレクター。1991年から金融専門の編集・制作会社、独立系投信評価会社などで資産運用に関連する各種制作に携わる。2007年より現職。現在は資産運用を中心にESGやIRなどの企業経営が主な業務分野。CMやゲーム・アニメなどの音楽制作も手がけている。
株式会社エンジン:http://engines.jp/
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