年齢や社会的な立場に関わらず、文章を書く機会というのは意外と多いもの。仕事では企画書作成や同僚へのメール、プライベートでは友達や恋人とするLINE。こういう場面で読みやすい文章が書けたら、仕事の能率が上がって、人間関係まで改善されるかも?
でも、「読みやすい文章」って具体的にどういう文章でしょう?
翻訳者・ライターという肩書きの筆者なら、この質問にはスラスラ答えられるべきなのですが……。なにせ文章というのは書いているときの感覚がすべてで、理論立てて説明しろと言われると難しいものです。日本語ネイティブだからと言って、日本語の文法について詳しく説明できるわけではありませんよね。なぜ一匹、二匹、三匹は、いっぴき、にひき、さんびき、と漢字は同じなのに読みは違うのか?と外国の方に問い詰められたら謝るしかない、というのと似たような感じかもしれません。
そもそも自分の文章が読みやすいかどうかなんて、自分では分からないもの。もしかして私もあなたも、読みづらい文章で周囲を辟易させているかも?!ここはひとつデータの観点から、「読みやすい文章」を客観的に分析してみましょう!
スマホの普及に伴い、人が文章に意識を集中できる時間は短くなってきているように感じます。
目まぐるしくアップされるニュースや情報記事、動画コンテンツ。最後に一冊の本を読み終えたのがいつか、思い出せない人も多いのでは。
そういった中、例えば鮮度が命のニュース記事の文字数は500-600文字だそうです。平均的な人で1秒10文字ほど読めるため、600文字だと1分でサクっと読めるわけです。
この法則は例えば5000-6000文字ほどの長めの文章にも活かすことができます。見出しで500-600文字ごとに区切ったり、ウェブサイトならページ改変をしたりすると、最後まで読み手を飽きさせません。
全体の文字数だけでなく、1文に含まれる文字数も読みやすさに大きく関係します。
「読む」行為は短期記憶と認知の合わせ技。これがうまく噛み合うのは、個人差はあるものの大体60文字までなのだとか。
ただし、60文字で構成された文が何度も続くと疲れてしまうため、短い文を交互に織り交ぜるのがベター。
ちょっと自虐的になりますが、最近公開された拙記事のある文を、60文字ルールで実際に校正してみましょう。
「最近よく耳にするけど、『エバンジェリスト』ってどんな人?その役割とは?」
1) エバンジェリストは、キリスト教世界では「福音主義者」という意味です。2) 16世紀初頭、ドイツの神学者ルターは自らを「エバンゲリスト(ドイツ語読み)」と呼び、腐敗と因習にまみれたカトリック教会に対抗して、「聖書を中心にキリストの教えに回帰しよう」と唱えました。3) これがいわゆる宗教改革です。
60文字ルールに照らすと、2番目の文が93文字と長すぎます。「え、ルターが何をしたって?」と読み返した人もいるかもしれません。では2番目の文を分割してみましょう。
1) エバンジェリストは、キリスト教世界では「福音主義者」という意味です。2) 16世紀初頭、ドイツの神学者ルターは自らを「エバンゲリスト(ドイツ語読み)」と呼び、腐敗と因習にまみれたカトリック教会に対抗。3) 「聖書を中心にキリストの教えに回帰しよう」と唱えました。4) これがいわゆる宗教改革です。
どうでしょうか、大分読みやすくなったのでは。基本的に、1文中の句読点が3個を超えると読みやすさに黄信号が灯るようです。
MS Wordなどで書類を作成する際は、10-11ポイントの文字を使うのが一般的ですよね。しかしある実験によると、300文字の読了時間が一番早かったのは、文字の大きさが21ポイントの場合だそう。
しかし21ポイントは約7ミリに相当するため、紙の出版物ではあまり現実的ではないでしょう。ウェブ記事はパソコン上ならまだしも、スマートフォンではスクロール回数が増えすぎてうんざりされそうです。
データ上では21ポイントが一番読みやすいとされていますが、この点はケース・バイ・ケースでしょう。しかし基本的に、読者の対象年齢が高い場合はポイント数を上げると読みやすさ感がアップします。
読みやすい文章を書くポイントを挙げてはみましたが、作文中にあれもこれもと考えすぎると、自然な文章が書けなくなるかも…と心配になりませんか?
そんなときに使えるのが、文章の読みやすさを自動的に分析してくれるMS Wordのデフォルト機能、「文書の読みやすさを評価する」。
文の数、段落数、1文中の平均文字数、さらには漢字とひらがなの割合までを一瞬で分析してくれるスグレモノです。ブラウザのメニューから簡単に設定できます。
自分の文章の読みやすさをデータから客観的に分析したい人は、使ってみるのもいいかもしれませんね。
参考リンク: 多くの人に読まれる「文章」と「時間」の黄金律 可読性−読みやすさの科学
(佐藤ちひろ)
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