個人から社会へ、お金の流れを理解するために。家計簿データの重要性とは? | データで越境者に寄り添うメディア データのじかん
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個人から社会へ、お金の流れを理解するために。家計簿データの重要性とは?

         

DXが進む時代に変わる「家計簿」についての連載3回目となる今回は「家計簿のデータ活用」についてです。

家計簿データは、単なる支出や収入の記録に留まらず、社会全体の経済状況や消費傾向を理解するための貴重な情報源です。個人の家計簿が集積されることで、政策立案やビジネス戦略の基盤として活用され、経済活動の効率化や社会全体の持続可能な発展に貢献しています。ここでは、家計簿データが社会に与える影響や重要性について探求します。

個人の家計簿が社会に与える影響とは?

個人が家計簿をつけることで、自身の支出傾向を把握し、賢くお金を使うことができます。

前回紹介した通り、最近では、デジタル家計簿により、手間をかけず、自分の資産を隈なく把握し、推移を追うことができます。

自分の資産状況を把握することは、投資など他の金融分野への興味関心を深め、金融リテラシーを高めることにもつながります。また、収支が明確になることで、余剰資金の把握もしやすくなります。筆者自身、デジタル家計簿をつけたことが投資を始めるきっかけになりました。

こうした個人の動きが集積されることで、社会全体の消費傾向や経済活動に影響を与えます。
簡単な家計管理にNISAやiDecoなど投資しやすい仕組みが重なることで、さらに投資に取り組む人が増えやすい状況になっています。実際、2021年に野村證券が行った調査では、2015年以降、投資人口は急増していることがわかっています。

家計簿データが示す社会の経済状況とは?

多くの人々が家計簿をつけることで集まるデータは、社会の経済状況を示す重要な指標となります。消費動向や生活水準の変化を把握し、政策立案やビジネス戦略の基礎として活用されます。

第1回の家計簿の歴史でも紹介した通り、家計簿が人々に広がることで、国を挙げた家計調査が行われるようになりました。そして、家計調査は今なお社会を支える重要な統計データとして重宝されています。
例えば、家計の消費支出に占める食料費の比率のエンゲル係数や、消費支出に占める養育費の比率を示すエンジェル係数は今でも社会の健康状況をはかる重要な係数になっています。

エンゲル係数

家計の消費支出に占める食料費の比率(%)のこと。ドイツの社会統計学者エンゲルの名にちなんでつけられました。

エンゲルが見つけた統計的法則によると、一般的には、所得が上がると、家計費に対する食料費の割合は低下する傾向を見せるといいます。一方で、収入がある額以下になると固定的な支出に圧迫されて食料費が削られるために、収入が低いにもかかわらずエンゲル係数は小さくなるというエンゲル法則の逆転現象が生じることも知られています。

エンジェル係数

消費支出に占める養育費の比率(%)のこと。名前はエンゲル係数を文字ってつけられたそうです。
近年では少子化で子どもの数は減る反面、エンジェル係数は増加傾向にあります

家計簿を通じたライフプランニングの広がり

近年、家計簿を通じたライフプランニングが注目されています。家計簿は単なる収支管理ツールにとどまらず、個人の生活スタイルや将来の目標に合わせた計画立案に役立つ重要なツールとして位置づけられているのです。実際、デジタル家計簿の中には、ライフプランニング機能を持つものも少なくありません。家計簿をつけることで、収入や支出の把握だけでなく、将来の貯蓄目標や投資計画、ライフイベントに備えた備えができるようになります

また、ライフプランニングは、個人だけでなく家族単位や家庭全体のライフスタイルや将来設計にも影響を与えています。例えば、教育費や住宅ローン、老後資金など、家族全体のニーズや目標を考慮した家計簿の活用が増えています。

家計簿を活用したライフプランニングの影響は、企業や社会全体にも波及しています。企業は従業員のライフイベントに対応した支援や福利厚生を通じて、働きやすい環境を提供することで生産性向上を図っています。また、社会全体でも家計簿やライフプランニングを通じた教育や支援が重要視され、持続可能な社会を築くための一環として位置づけられています。

家計簿を通じたライフプランニングの広がりは、個人や社会がより良い未来を築くための手段として、ますます重要性を増しています。

データ駆動型社会の実現へ向けて

データ駆動型社会の構築が進む現代において、個人の家計簿データが重要な位置を占めています。ここまで説明したように、家計簿データは、個人の支出や収入だけでなく、消費傾向や節約意識、投資行動など、個人の経済活動全般を示す貴重な情報源となり得ます。このデータが集積され、分析されることで、社会全体の経済状況や消費動向を把握しやすくなります。

データ駆動型社会の実現には、個人データの収集・解析が欠かせません。家計簿データは、この取り組みの一部として位置付けられ、個人の経済活動が社会全体に与える影響を理解する手段として活用されています。例えば、消費行動の分析を通じて、需要予測やマーケティング戦略の最適化が行われることで、企業の経済活動が効率化され、経済全体の活性化が図られます。

また、家計簿データは政策立案の際にも重要な情報源として活用されます。社会保障制度や税制の見直し、経済政策の策定など、個人の経済活動に関わる政策がより効果的に行われるためには、正確なデータが不可欠です。家計簿データは、個人の経済活動の実態を客観的に捉える手段として、政策決定において重要な役割を果たしています。

総じて、家計簿データは単なる個人の支出や収入の記録に留まらず、社会全体の経済活動や消費傾向を理解するための貴重な情報源として、データ駆動型社会の構築に貢献しているといえます。

手軽で奥深い家計簿に、みなさんぜひチャレンジしてみてください。

(大藤ヨシヲ)

 

参照元

・高まる投資熱-投資している人と投資に興味を持つ人の割合が大きく上昇- |2021年 | データで読み解く金融ビジネスの潮流 | 野村総合研究所(NRI)・エンゲル係数とは

 

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