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前回は、アメリカのインダストリアル・インターネット(産業のインターネット)について紹介しましたが、欧州ではドイツが『インダストリー4.0』というキーワードで、ドイツ流のものづくりを世界標準にする取組みを産官学で進めています。
ドイツ政府は2020年までに、スマートファクトリー(Smart Factory:繋がる工場、考える工場)の実現を目指して既に100億ユーロ(約1.3兆円)を投資しています。
欧州市場の経済状況が厳しいのは、ニュースで最近良く聞く話です。
日本経済がアベノミクスを背景にデフレから脱却しようと動き出し、アメリカ市場も景気回復が明確になっているなか欧州経済の停滞、デフレ懸念はより深刻となっています。ドイツは欧州で唯一つ景気が好調な国ですが、日本やアメリカの景気回復がドイツの強みである製造業を脅かす存在であると懸念を持っています。
ドイツのGDPの25%、輸出額の6割は製造業によるものです。『インダストリー4.0』は、ドイツの製造業を世界標準とする取組みであり、その要となるのは工場です。工場にある工作機械や治具など設備産業は、ドイツが強みとする産業です。つまり、工場とその設備をネットで繋ぐ標準化を制すれば、製造業を征することができるという訳です。
戦略の1つ目は、ドイツがリーダーとなって、工作機械や製造に必要な部品を輸出して世界の工場の製造技術をリードする。戦略の2つ目は、ドイツがリーダーとなることで付加価値が高く、競争力のある製品や主要部品をドイツで生産して、継続的に輸出する仕組みを作ること。つまり、世界標準のルールを作る戦略です。
ドイツが産官学をあげて取り組んでいる目的は、次の3つです。
1.製品と付属するサービスのトータルパッケージを提供して強みを発揮すること。
2.標準化プロセスの要を押さえて世界の製造業をリードすること。
3.機械を多様な用途に使用できるように作り、組み込むソフトウェアやアプリケーションが目的に応じた機能やサービスを提供できるようにすること。
アメリカの『インダストリアル・インターネット』に良く似ていますが、いくつか異なる点があります。
つまり、復活したアメリカと日本の製造業への対抗策として、この戦略を進めています。
ドイツがまず取り組んだのは、MES(製造実行システム)と呼ばれる工場で使われる設備の標準化です。
ISO22400というのが、そのMESのKPI(MESの34の管理指標)を定めたものですが、これを主導したのが欧州(ドイツ)の自動車関連企業です。MESの大手ITベンダは、ドイツのシーメンス社です。このMESと連動するのが企業の基幹系システムであるERP、SCM、PLM、CRMといったシステムです。IT業界で企業向けシステムに携わっている方なら知っていると思いますが、こうした基幹系システムの世界最大手ITベンダがドイツのSAP社です。
ちなみに『インダストリー4.0』の司令塔はドイツ工学アカデミーという組織で、その2人の理事長の1人は、元SAP社のCEOヘニング・カガーマン氏なのです。
こうして『インダストリー4.0』は市場のさまざまな思惑をからめつつ、しかし新しい産業モデルとして今も進化を続けているのです。
[著]Wingarc1st Official The BLOG編集部
本記事はウイングアーク1st株式会社の運営するThe BLOGに掲載された記事を許可を得て掲載しています。
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