帳票とは主に企業の活動内容を示す書類のことです。よく似た会計用語として「帳簿」と「伝票」がありますが、帳票はこれら両方の包括を意味する言葉として使用されています。
企業では様々な取引が日々取り交わされていますが、帳票はこれらの取引が実際に行われたことを示す証跡として重要な役割を担っています。
このように、請求書から見積書のような金銭取引から利用履歴など業務に関わるものまで何百種類もの帳票が血流のように今もなおビジネスの世界を支えています。これまで、帳票はパソコンやインターネットが普及するまでは、手書きで作成していましたが、ITの導入に伴い ExcelやWordなどのビジネスソフトや社内の基幹システムにて作成するようになりました。
昨今ではパソコンにて印刷出力した紙媒体での保存から、電子データのまま保存する「電子帳票」へと変わりつつあります。
電子帳票は、
といった費用対効果の高い様々なメリットをもたらしてくれます。
帳票は「帳簿」と「伝票」に分けられますが、記録が目的であることに違いがないため、両者は混同されてしまいがちです。
帳簿とは、企業取引を記録することを目的に作成する企業の家計簿のようなものです。
伝票とは、企業取引を行ったことの客観的な証明を目的に作成する書類です。
帳票の多くは、お金の動きが記録された伝票の記載内容から作成することが多いため、伝票は帳票の転記元データとして扱われる場合もあります。
帳簿は主に、会社の経営状況の把握や確定申告や決算申告などに使用します。
伝票は主に、日々の取引毎に作成する書類で、帳簿の内容を証明する書類でもあります。
企業の会計情報を証明する帳票には、法律で一定期間の保存が義務付けられています。帳票の保存を定義する法律は「会社法」と「法人税法」で定められており、それぞれ対象とする帳票の種類、期間が異なります。
決算書や仕訳帳、総勘定元帳などは会社法で10年の保存が定められていますし、預金通帳や棚卸表などは法人税法で7年の保存が定められています。
会社法と法人税法の両方に該当する帳票も中にはあるため、多くの企業では期間が長い会社法の10年を保存期間に適用しています。
法人税法で定めている帳票の保存期間は7年間ですが、欠損金が生じた事業年度については9年間の保存が必要です。
領収書等の伝票については、法人と個人で期間が異なり、法人であれば7年、個人であれば5年の保存が義務付けられています。
なお法人税法上では以下の帳票を対象としています。
会社法で定めている帳票の保存期間は10年です。法人税法で欠損金が生じた事業年度は9年の保存が義務付けられていることと保守・管理の単純化を配慮して多くの企業では、帳票の保存期間を一律10年で運用しています。
なお会社法上では以下の帳票を対象としています。
帳票の保存期間が法律で定められている以上、期限を迎える前に帳票を破棄、紛失してしまった場合、どのような罰則を課せられるか?を懸念されると思います。帳票の廃棄や紛失は、監査や何かしらの理由で過去の帳票が必要になったときに発覚します。この場合、当然、会社法や法人税法の違反に該当するので、国税当局の指導を受けることになります。ですが、違反があった場合の罰則規定は特に設けられていないため、企業や個人事業主が罰則を受けることはありません。
保存期間の違反自体に罰則はありませんが、だからといって帳票を保管する必要が無いというわけではありません。確定申告では、帳簿や伝票が揃っていないと、控除や税的優遇措置が受けられなくなり、税務調査を受けた際に発覚すると、追徴税が課せられてします。帳票は年度を跨いだ節税対策でも必要になりますので、違反しないことはもちろん、厳格な体制で管理しなければなりません。
帳票は原則として、紙媒体での保存が義務付けられています。そのためパソコンのExcelやWordで作成したとしても、プリンターで紙に印刷出力したものをファイリングして保管する必要があります。
このような保管方法は、印刷するための紙、インク、トナー、ファイルといった消耗品、プリンター、ファイルを格納しておくための場所、書類棚といったコストが強いられてしまいます。また帳票が必要な場合、一冊一冊開いて探す必要がありますし、持ち出しによって紛失してしまう恐れもあります。このような状況の改善策として、電子データのまま保管が認められている電子帳票を導入する企業が増え続けています。
電子帳票を利用するには、3ヶ月前までに税務署に申請書を提出して承認を受ける必要があります。電子帳票はExcelやWordで作成した帳票のデータそのもの、また契約書・領収書などを除く帳票に関しては、スキャナーでデータ化したものが認められています。
なお電子帳票では、以下のファイル形式にて保存します。
様々な情報機器・環境で文字化けや罫線のズレなく閲覧、出力ができる独立性の高いファイル形式です。必要に応じて暗号化などの技術を活用したセキュリティ設定が可能です。
Microsoftの表計算ソフトのExcelのファイル形式です。Excelでは関数などを用いた数式、グラフなどを用いた二次加工や追記などユーザーの用途に応じて自由に編集することができるため、多くの企業では閲覧、出力だけでなく、帳票の作成にも利用しています。
インターネットのブラウザに対応したフォーマットです。パソコンやスマホ、業務システムで閲覧、出力、作成、入力、編集ができるため、HTML帳票の利用シーンが拡大しています。
電子帳票とは2005年4月に施行された「e-文書法」で規定された電子ファイル形式の帳票のことです。この「e-文書法」が施行されたことで、多くの企業が帳票類の電子データ化のプロセスを導入しています。
e-文書法、電子帳簿保存法とは、法人税法や会社法、商法、証券取引法などで保管が義務づけられている文書や帳簿、請求書、領収書などについて、紙媒体だけでなく電子化した文書ファイル(電磁的記録)での保存を容認する法律です。
情報通信技術(ICT)の活用により帳簿の保存にかかる企業の負担を軽減し、業務効率の向上やコスト削減を図ることを目的としています。
e-文書法では、主に以下の3つを電子帳票の基本要件としています。
電子データ化された帳票が閲覧・出力する機器(ディスプレイ、プリンター)にて、明瞭な状態で確認できることを意味します。
ファイルの中身を人が目視で確認することなく、必要な電子帳票のデータをすぐに引き出せる機能を意味します。
電子データ化の際、また電子データ化後に改ざんや消去といったことが行われていないことの証明を意味します。電子帳票ではスキャナーによる紙媒体からの電子データ化も認められており、原本から電子化に至ったデータが同一であることを証明する必要があります。Excelや業務システムで作成した帳簿に対しても閲覧、編集、更新などの履歴を証明するシステムを備える必要があります。
電子帳票は増え続ける紙の帳票を電子データとして保存するので、紙媒体では保管先が分散されがちな帳票の一元管理を実現してくれます。帳票の一元管理はアクセス権限が許された範囲内であれば、閲覧、出力、作成、編集が場所や時間に関わらず、誰にでもできるようになるため、業務効率が大幅に向上します。
個人事業主や零細企業の場合、取引相手を限定したビジネスのため問題にはならないでしょうが、中小以上の規模の企業は複数の顧客と取引しているため、それに比例して帳票類が増えていきます。法律では7年〜10年間、過去の帳票類の保存が義務付けられているため、ほとんどの企業は増え続ける帳票の保守・管理に悩まされています。電子帳票は保存先がデータサーバーのストレージになるため、「ペーパーレス」を実現することができます。印刷や設備のコストなどの削減だけでなく、検索、一元管理、履歴管理といった利便性の高い機能も提供してくれます。
電子帳票システムとは、企業の取引に必要な様々な帳票の作成から送付・出力、管理に至るまで、様々な業務の効率化を図るためのシステムのことです。
以下に、電子帳票システムに搭載されている主な機能について紹介します。
電子帳票システムの中心になる機能です。作成した帳票の自動分類、作成・閲覧・編集等のアクセス履歴の自動取得、廃棄までのライフサイクルの自動管理など、電子帳票の管理の自動化を実現してくれます。
様々な様式に対応したフォーマットへの必要事項の入力にて帳票が作成できる機能です。入力チェック機能なども備えているため、ヒューマンエラーのない帳票の作成を実現してくれます。
電子データとして管理している帳票の訂正、追記、修正等の機能です。データサーバー上で一元管理された帳票への編集のため、内容の異なる帳票の複数の存在等によるトラブルを予防してくれます。
簡易検索、レイアウト検索、フィールド検索などで特定の帳票を検索する機能です。書棚からファイルを取り出して一枚一枚書類に目を通すことなく、短い時間で必要な帳票を捜すことができます。
設定したグループやユーザーごとにアクセス権限や機能制限を設定する機能です。アクセス権限(参照・出力・編集)や削除権限などをキャビネット・フォルダ・帳票類ごとに付与することで、情報漏洩や不正利用を予防します。ユーザーIDやパスワード登録を軽減する機能も備えています。
昨今世界的に萬栄している新型コロナウイルスへの感染防止対策として、自宅で仕事を行う「テレワーク」、「リモートワーク」が急速に広まり続けています。テレワークは「働き方改革」の一環として、一部の企業や特定の従業員に対して導入されていましたが、人との接触の削減が求められる感染防止対策として、
といった従来のワークスタイルの業務を見直す企業が増え続けています。従来の紙媒体による帳票業務では、出社や人との接触を避けることが困難ですが、帳票の電子データ化とクラウドに対応した電子帳票システムの導入により、時間や場所を選ばず帳票業務を実施することが出来るようになります。
テレワークを実践している多くの企業では、自社のネットワークと自宅とを安全に通信できるVPN(Virtual Private Network)を導入しています。セキュリティ対策を備えたパソコンさえあれば、自宅からVPNを介して社内のネットワークにアクセスできるため、出社したときと変わらずに電子帳票システムを使用した業務を実施することができます。電子帳票は、企業のコスト削減、業務効率の改善だけでなく、従業員にとってメリットのある働き方も実現してくれます。
企業の活動内容の記録を記す帳票の役割、種類、法律上のルール、保存方法、そして昨今導入が進んでいる「電子帳票」について紹介させて頂きましたが、帳票の電子データ化と電子帳票システムの有用性をご理解して頂けたでしょうか?
最後に今回紹介させて頂いた要約をまとめとして、以下に記載させて頂きます。
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