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データサイエンティストだけでは世の中は変えられない。 やがて来るデータ・ドリブン至上主義時代のデータとの向き合い方

         

必要な姿勢は「データ」と「事業」をどう橋渡ししていくか


データは、ある意味で事実をミスリーディングする可能性があります。一方で「データサイエンスに対する過度な期待」があるのも事実で、そこに危うい状況を生み出しやすい。

厚生労働省の「毎月勤労統計調査」の例など、日本の経済情勢を図る重要な指標であるにも関わらず、データが正しく集められていないような場合はともかく、ダニエル・カーネマンが著書で解く「速い思考」(システム1)と「遅い思考」(システム2)のうちの前者のように、人は誤った認識に基づいて判断しがちな生き物です。トレーニングによって後者システム2が可能になるのと同様に、データとの付き合い方を今一度考え直す時に来ていると思います。

データはいわば「食材」です。ある目的で収集されたデータは「土の付いた野菜」と同じ状態です。食卓に並ぶまでに土を落とさなければならないし、アクを取らなければ食べられません。そうした前処理をせずに、なんの疑いもなく盲目的に「土のついた野菜」を生でガリガリとかじっているのが、多くのデータに対する接し方の実態かもしれません。データは有効に使えば、人を動かしたり、説得したりする強いパワーを持っています。だからこそ、データに出会った時、それを扱い、捉える「目利きとしての力」が問われます。

データはあくまで数字であり、そこに意味付けをするのは人間です。データ収集や分析に至るまで、まずは人間がバイアスのかかりやすい生き物であるとの前提に立ち、かつ、行動経済学的な視野も持ちながら、きちんとクレンジングされたデータで判断しないと、間違った意思決定をすることになります。「データ」の限界を知り、その恩恵を「事業」にしっかりつなげることのできること、これこそが、これから求められるデータとの向き合い方だと考えます。

嘘をウソと見抜けなければ、データを扱うのは難しい

昨今さまざまな出来事がマスコミをにぎわせていますが、データサイエンスの視点で見ていると、どうしてそのようなことが起こるのかが見えてくることがあります。それを『データサイエンス「超」入門』(2018年、毎日新聞出版刊)という本にまとめました。サブタイトルは「嘘をウソと見抜けなければ、データを扱うのは難しい」としました。「アベノミクスで本当に景気はよくなったのか」といった数々のトピックごとにさまざまな統計データを見比べながら、データの特性やデータの見方を説明したデータジャーナリズムを学べる“超”入門書です。

データサイエンスの入門書は他にもありますが、多くは「分析」に重きを置いた内容です。そこにデータ捉え方の視点を提供したかったのです。

いつもテクノロジーは、ある日突然、飛躍的な進歩を遂げます。しかし、その進化に社会がついていけません。インターネットがその代表例でしょう。社会全体がその恩恵を十分に受けていると感じるまでに、10〜15年間のタイムラグが生じたのではないでしょうか。

そのことからすれば、2010〜11年頃に出てきたデータサイエンスの恩恵を社会全体が受けるようになるのは、2020年代に入ってからでしょう、まだ少し先ですが、確実に訪れる未来です。それまでにわれわれが今養うべきは、そうしたプロフェッショナルやツールなどのテクノロジーを通して、データとどう向き合かです。データの本質を理解しなければ、せっかく素晴らしいデータに出合ったとき、それを生かしきれません。

(取材・TEXT:データのじかん編集部+JBPRESS+田口/安田  PHOTO:Inoue Syuhei  企画・編集:野島光太郎)

 

【参加無料】updataNOW23 - 10月31~11月1-2開催

10/31(火)~11/2(木)開催のデータでビジネスをアップデートする3日間のビジネスカンファレンス「updataNOW23」に松本氏も登壇。「updataNOW23」はウイングアーク1st社主催の国内最大級のカンファレンスイベントで、DX・データ活用を軸にした約70セッションと30社以上が出展する展示など、会場とオンラインのハイブリッド形式で開催されます。


DX疲れ/進まないDXにマーケティングという補助線を引く
DX白書2023のサブタイトル「進み始めた「デジタル」、進まない「トランスフォーメーション」」が象徴するように、DXは「デジタルという手段で顧客にどんな価値を提供するか、そのために私たちの組織をどうトランスフォーメーションするか」が問われるようになってきました。そのため「今までのアプローチでは上手くいかない」と悩む場面も増えていると聞きます。効率化や生産性向上の「デジタル」から、組織変革や新価値創造のための「トランスフォーメーション」を実現するために、現在のDX推進は大きく変化する必要があります。その1つの手段として「マーケティング」があると筆者は考えます。本セッションでは、データサイエンティストとマーケターのキャリアを活かしたDX推進方法と事例をお話しいただきます。

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