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2020年5月30日、Zoomを使ったオンラインイベントとして『S1グランプリ』(正式名称「Sales No.1 Grand Prix」)が開催され、一次選考・二次選考を通過した4名のトップ営業パーソンが、オンライン商談のTipsやノウハウを披露し、トップの座を競った。第2部では、登壇者とゲストによるパネルディスカッションが行われ、その中でもウィズコロナ時代の営業について意見が交わされ、同イベント全体を通して、今後の営業(商談)を含むビジネスの進め方について、示唆に富んだ内容となった。本記事では、イベントの内容をお届けする。

営業スキルはあらゆるビジネスパーソンの自己実現をかなえるスキル

Sales No.1 Grand Prix 運営代表の釣田翔氏(写真右)と当日の司会進行を務めた小林千夏氏(写真左)

S1グランプリは、これまでオフラインにて3回の開催実績があり、今回も当初は500名規模のオフライン大会が予定されていた。しかし、コロナウイルスの影響により、急きょ、オンライン版のスピンオフイベントとして開催されることになった。

イベントの冒頭、大会代表を務める釣田翔氏(株式会社RocketStarter代表取締役)は、開会あいさつとして次のように述べた。

「Sales No.1 Grand Prixは『営業というチカラで、自己実現を』というミッションを掲げる有志団体です。私たちは日頃から営業職の面白さを発信していますが、一般的にはまだまだ営業職のイメージはあまりよくありません。しかし営業職は幅広いスキルが身に付く面白い職種であり、そのチカラを磨けば磨くほど人間力も磨かれる、そんな唯一無二の職種だと考えています。今回の決勝大会プレゼンのテーマは『オンライン商談』。4名の発表には、営業に必要な全ての要素が網羅されていると思います。楽しみながら、いろいろな気付きを得てください」(釣田氏)

「オンライン商談」というウィズコロナ時代にも即したテーマにて、プレゼンター4名は持ち時間「5分」の中で商談のTipsやノウハウを発表した。いったいどんな発表が行われたのか、登場順に見ていきたい。

足立賢信氏「明日から使える!オンライン商談で生産性を飛躍的に高める方法」

1人目のプレゼンターは、株式会社コドモンの足立賢信氏。同社は保育園・幼稚園・学童教室などの幼保施設向けに業務支援システム「コドモン」を開発・提供している。オンライン商談のみで、1年半に1000以上の契約を締結し受注に結びつけた実績の持ち主だ。足立氏からは、オンライン商談におけるリード獲得の方法が共有された。

「ホットリードを獲得する方法として、私たちは、いわゆる営業DMやメルマガの代わりに、1to1色の強いメールを送り、広告色を徹底的になくすことで、読まずに捨てられてしまう『ゴミ箱行き』を回避しています」(足立氏)

また、「オンライン商談を申し込むも、訪問を希望されてしまう」という課題に対しては、オンライン商談という言葉を使わず、「電話で打ち合わせさせてください。その際はお手元のパソコンで資料を共有させてください」と少し言葉を言い換えるだけで、オンライン商談を実現するテクニックを紹介。それでも訪問を強く望まれた際の「訪問時間短縮のため事前にお電話でのお打ち合わせを!」と回避する手法を紹介した。


さらに足立氏は、スムーズな商談を最優先にするために、営業で重要視されている「双方向の会話」をあえて行わず、「一方的に話す」ようにしているのだとか。その際のTipsとして次の8つが伝授された。

①動画を使ってイメージを伝える。
②飽きられないように、資料は“パラパラ式”でテンポ良く。
③相手がどんなお客様でも台本を替えず、台本の中身もみんなで研鑽し続ける。
④ツカミは熱く、そしてエモく。相手から「分かる!」をいう共感を得る。
⑤否定されがちなことはすべて先に自分から言ってしまう。
⑥調査・ヒアリングしておいたナマの声を資料に盛り込み、お客様を主語にする。
⑦商品説明は「お客様の課題→解決・メリット→事例」の順で。
⑧合意を得たら、申込後の流れも説明してしまう。

原田真衣氏「オンライン営業でも売上を上げ続ける2つの実践例」 


2人目のプレゼンターは、カクテルメイク株式会社は原田真衣氏。Creative-techベンチャーである同社は、SaaS型動画広告自動生成ツール「RICHKA(リチカ)」などを展開している。原田氏のプレゼンは、「オンライン商談になって、売り上げは下がっていませんか?」という問い掛けから始まった。

「オンライン商談で売り上げが下がる要因の1つは、お客様との間に物理的な『距離』ができてしまうことにあります。決裁者に直接コンタクトが取れず、稟議が進まないなんてこともよくあります」(原田氏)

その解決策として、原田氏は2つのことを実践しているという。1つは「サービス概要を説明した後にする質問」。そしてもう1つは「お客様が思わず契約したくなってしまうアプローチ」だ。

「サービス概要を説明した後にする質問では、特に『○○(商談相手)さん個人として、弊社のサービスを使ってみたいですか?』という質問がとても大事。なぜなら、この窓口となる商談相手が通常業務がある中で、導入に向けて進めてくれるからです。窓口となる商談相手に熱量があるかないかで成約率は大きく違ってきます。また決裁者が売り上げを大事にするタイプか、現場のニーズを大事にするタイプかによってアプローチ方法やお渡しする資料の内容を変えています」(原田氏)

さらに「お客様が思わず契約したくなってしまうアプローチ」とは、「稟議書と提案書を一緒にしてしまう」というもの。

「弊社でいえば、なぜ今、動画をやれなければならないのかを、市場データや他社の事例、導入後すぐに実践できるTipsを盛り込んだ提案書を作成しています。また、そうした資料をお渡しした1週間後とかに電話で社内での進み具合を確認することもあると思いますが、このときにも『検討状況いかがですか?』などと質問すると、お客様は『営業されている!』と感じてしまいます。それを回避し、自分が『味方』であると感じてもらうため『他に必要なものはありますか?』などと聞くようにしています」(原田氏)

橋口浩暉氏「次の“有”を生み出すための“無” 正しい沈黙のつくりかた」


3人目のプレゼンターは、Mtame株式会社の橋口浩暉氏。「デジタルマーケティング領域の上流から下流までをトータルソリューション」するという同社。その中で国産MAツール「BowNow」のオンラインセールスマネージャーを務める橋口氏は、訪問営業を一切やったことがない。言わば、ネイティブ・オンラインセールスである橋口氏は、課題は「コミュニケーション」にあると捉えている。


「皆さんはメラビアンの法則をご存じでしょうか? コミュニケーションの影響度の高さを示す考え方で『言語情報7%、聴覚情報38%、視覚情報55%』『言語情報よりも非言語情報のほうが影響度は高い』なんてことが知られています。オンラインセールスにおいても同様で『服装は清潔感のある白』『資料も見みやすく読みやすく』とたびたび言われ、私もその通りだと思いますが、ここで私が着目したいのは『聴覚情報』です」(橋口氏)

実際に橋口氏らが営業における聴覚情報の影響度についてAI分析をしてみたところ、以下二つのことが分かったのだとか。

①失注している商談に比べ、受注している商談では“話す速さ”が相手より圧倒的に遅い。
②失注している商談に比べ、受注している商談では“沈黙の回数”が多い。

「人が『話す速さ』と人の言語処理の能力は同じだと言われます。相手と同じ、あるいは少し遅いくらいのスピードで話すのが営業では適切です。そして、ひたすら話し続けるのではなく、あえて『沈黙』の時間をつくることで、自分と相手の双方に考える時間が創出されます。しかし遅く話すのは意識的にできますが、『沈黙』をつくるにはテクニックが要る。そのテクニックとして、カンペ付きの資料に意図的な沈黙や間をつくる時間を入れ込むことです」(橋口氏)

橋口氏は「オンラインセールスにおける沈黙は、次の『有』を生み出すための『無』である」と述べ、プレゼンを終えた。

上村翔氏・佐々木里穂氏「オンラインで“単月2億円”をつくる方法」


最後のプレゼンターは、株式会社ネオキャリアの上村翔氏と佐々木里穂氏。新卒採用・中途採用における支援事業、人材紹介事業を手掛ける同社において「いつもタッグでオンライン商談を行っている」という2人は、単月売上2億円を達成したこともあるという。

「佐々木さん、本日のテーマは?」(上村氏)

「はい、今日のテーマはアプローチとクロージングです」(佐々木氏)

この日、2人は実際の商談スタイルでプレゼンに臨んだ。最も成果を上げるオンライン商談の方法を模索した結果、同社では「2名体制による、各人の強みを生かした役割分担」にたどり着いた。具体的には佐々木氏が「アポイントの獲得(アプローチ)と空気和ませ役」を、上村氏が「クロージング」を担当している。

経営者や決裁者にたどり着くため、SNS、特にBtoB営業ではFacebookでアプローチしているという佐々木氏。同氏から伝授されたアポイント獲得のカギは、以下の3点だという。

①ブログやHP、ニュースなどから相手の興味・関心を調べ、アピールする。
②アポの切り出し方として「商談」「提案」はNG。「情報交換」など“ポップさ”を出す。
③共通の知り合いを増やすと「承認」を得やすくなる。

佐々木氏の後を受けてプレゼンを行った上村氏も、クロージングのポイントを3点に整理して共有した。

①値段は明示せず「松・竹・梅」ではなく、あくまで「松」のみ提案することで、オンライン商談にありがちなお客様購入単価の低下を防ぐ。
②オンラインだからこそ、再提案・再々提案のアポをとり続け、お客様からいただく“宿題”を克服し、一番買ってもらいたいプランを買ってもらう。
③お客様のホンネを聞き出すためにも、Zoomを使った会食を実施する。

4名の発表後、視聴者参加のオンライン投票でプレゼン内容が採点された。採点の結果、Mtameの橋口氏が優勝に輝いた。

決勝大会後のイベント第2部では、S1グランプリの小林千夏氏(イベントデザイナー)をファシリテーター役に、ゲストパートナー3名ずつが参加したパネルディスカッションが行われた。

コロナのピンチは、営業にとってチャンスになり得るのか

前半のパネルディスカッションの主なテーマは「コロナによって迎えたこのピンチは、営業にとってチャンスになり得るか」「これからの新しい営業のかたちを考える」など。各者はこれらの設問にそれぞれ次のように語った。

■パネリスト■
株式会社morich 代表取締役 森本千賀子氏
ソフトブレーン・サービス株式会社 代表取締役社長 野部剛氏
ウイングアーク1st株式会社 マーケティング本部 執行役員 本部長 久我温紀氏

「リモートでの営業を始めて1週間で『これは大きなチャンスになる』と私は思いました。なによりもまずは移動時間がなくなった。さらに、これまで決裁者との商談はだいたい2週間毎とかが常でしたが、オンラインだとアポイントも取りやすい。本日の橋口さんのプレゼンにもあったように、オンラインではノンバーバルのコミュニケーションが行いにくい。でも録音した商談を聴き直して自己分析するなどすれば、自分のオンライン営業のスタイルを見直す機会を得られ、解決の糸口も見つけられるはずです。もうコロナ前には戻れない、戻りたくないとすら感じています(笑)」(森本氏)

「大前提として『ピンチがチャンスになる』という言葉の捉え方がとても大事であると私は考えます。今日のプレゼンターのようなトップの営業パーソンは、物事をポジティブに捉える『イノベーター気質』の方が多いのではないでしょうか。ある意味、新しいゲームを始めたときのような感覚でオンライン営業と向き合いながら、多大な興味・関心を持って挑まれています。そういう方の営業はおのずとパフォーマンスが高くなります。また、マネジメントの観点において、オンラインという手法には大きなメリットがあります。それは、オフラインの営業は同行しない限り、部下の営業をリアルタイムで見てアドバイスすることができませんでした。オンラインでは、それが可能となり、人材育成・指導がしやすくなりました」(野部氏)

「営業における成果につなげていくための手段を考えるとき、『こうすれば勝てる!』というパターンはないと思います。これまでは営業パーソンそれぞれが持つ個性やアイデアが、自身だけが使える勝ちパターンになっていました。そのため、営業はフィジカル(身体的)な面に頼る部分も大きかった。しかしこれからの営業はフィジカルだけでなく、デジタルも必要になっていきます。長らく『暗黙知』の中で行われ、検証が難しいとされてきた営業ですが、それが今、データやファクトをベースに分析・改善するによって勝ちパターンを得られるものに、そしてスキルやノウハウを共有できるものになっているのです」(久我氏)

これからのトップ営業に必要なスキルとは

後半のパネルディスカッションで最も議論が活発だったテーマは「これからのトップ営業には、どんな人がなれるか」。パネリストはこの設問に次のように答えた。 

■パネリスト■
株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 代表取締役社長 横山信弘氏
株式会社セレブリックス 営業企画本部 本部長 今井晶也氏
営業部女子課 代表理事ファウンダー ベレファクト代表 コナカ社外取締役 太田彩子氏

「オンラインやリアルに関係なく、これからはお客様が欲しがるものを提供するだけではトップセールスにはなれません。お客様の課題を解決するのはもちろんのこと、お客様がまだ気付いていない潜在的な課題を気付かせるテクニックが必要になるでしょう。例えば、先方がオンラインをやりたがらないのだとしたら『やらなければだめですよ』『私と一緒に勉強しましょう!』と啓蒙・誘発することを、営業がしなくてはなりません。『お客様が対応してくれないから難しい』と尻込みするようでは、成績は上がらないでしょう」(横山氏)

「これからは『コンテンツ・ファースト』の時代が到来します。すなわちコンテンツをつくれる人が勝てます。特に先行きが不透明な今のような状況下では、消費が鈍り、なるべくなら『今は買いたくない』し『買うならもっと先』。となれば、新規営業も苦戦し、やるだけ無駄になってしまいがちです。そんな状況下では、相手側から『指名』されるような人間(営業)になることが大切。自分をコンテンツ化し、有益な情報を提供し続けることで、『この人に相談したい』『この人に勧められたい』と思っていただくことができ、それが『指名』につながります」(今井氏)

「今井さんの『コンテンツ・ファースト』は私も大賛成。なぜならリモートになって移動時間を削減できた分、費やすべきなのは『事前準備』だから。リモート営業では今までの『会議にいけばなんとかなる!』がまったく通用しなくなってしまいました。私自身はリモート会議が始まる前段階でお客様の心理的期待値を上げておくようにしています。このとき効果的なのが、自社や自分自身のセルフブランディング。一風変わった方を紹介するテレビのバラエティー番組などが参考になりますが、例えば『シイタケだけを10年間栽培し続けた人』みたいなテロップが出ると興味を惹かれますよね? そうしたキャッチコピーが付けられるような自己プロデュース力が必要になっています」(太田氏) 

約3時間にわたって開催された「Sales No.1 Grand Prix ONLINE 」。ウィズコロナ時代、そしてその後の営業スタイルを考える上でのヒントがふんだんに盛り込まれたイベントとなった。今後も「データのじかん」では、イベントを厳選して取り上げ、そこで得られた知見を共有していく。

S1グランプリ(Sales No. 1 Grand Prix)
S1グランプリは、選考を通過したトップ営業パーソンが、プレゼンとロープレを実施し、審査員と参加者全員による採点でトップオブトップを決めるというもの。 全国の有志によるボランティア活動で運営されており、一緒に活動をする実行委員は年間を通じて継続的に募集している。


S1グランプリ団体情報:Sales No.1 Grand Prix
事務局住所:162-0063 東京都新宿区市谷薬王寺町52-6
Email:s1gp.staff@sales-no1gp.com
公式Twitter:https://twitter.com/s1gp2020

(取材・TEXT:JBPRESS+田口/稲垣/安田   PHOTO:Inoue Syuhei  企画・編集:野島光太郎)

 

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