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1日の仕事を終え、部屋を片付けて、ベッドに潜り込む。これが至福の時間という方も多いでしょう。

しかし、そんな時間を邪魔するあの音。。。。

ぽちゃん…ぴちょん…………ぴちょん………

そうだ、ついさっき水を飲んだから。蛇口に残った水が垂れてるんだ。止まる。止まるよね…?

………ぴちょん… 

で、結局は蛇口を締め直しにベッドから這いずり出ることになる「あの音」の正体が解明されたことが、6月22日付けの学術誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」で発表されました。しかも、原因がわかっただけでなく、解消方法も解明されたそうです。

きっかけは「バケツに水が落ちて眠れない夜」

今回の研究のきっかけは、ある大学教授が雨季のブラジルで、雨漏りのする家に泊まった夜がきっかけでした。そう「あの音」で眠れなかったのだそうです。

それが、今回の論文の主筆者であるサミュエル・フィリップス(Samuel Phillips)とケンブリッジ大学で工学を教えているアヌラグ・アガルワル(Anurag Agarwal)教授。

ぴちょん…ぴちょん……という音を聞きながら、アガルワル教授は考えました。

「なぜ、水滴が水に落ちたときだけこんな音がするのだろう?」

たしかに、木のテーブルを手で叩いてもあの何とも音楽的で、でも鬱陶しいような音はしません。木のテーブルに水滴を落としても、やっぱりあの音はしないのです。

そこで、アガルワル教授はイギリスに帰って「あの音」について徹底的に調査を始めたのです。

最新鋭機器でついに解明!原因は……

実はこの「ぴちょん音」については1世紀以上も前から研究者によって解明が試みられてきたテーマなんだそうです。

今回の実験の下地になったのは、その長い歴史の中では比較的最近の1959年に発表された論文「Splashes as Sources of Sound in Liquids(液体中の音源としての飛沫)」。

この論文の中では「水滴の衝撃で発生する気泡に関係がある」というところまで分かったものの、機材が現在ほど進んでいなかったために証明に至りませんでした。

そこで、アガルワル教授とフィリップスは最新鋭の機器でこの課題に挑むことに。

さまざまな検討の結果、以下のような装置を用意しました。

  • 水槽内に水中集音マイクを設置
  • 水槽の外にも高感度な集音マイクを設置
  • 正確に同じサイズの水滴を垂らす装置を水面86mmの高さに設置
  • 水面と同じ高さと、水が落ちた様子を上から観察できる位置にそれぞれハイスピードカメラを設置 

基本的には1959年の実験と同じ構成ですが、ポイントはハイスピードカメラ。これで水滴が水面に落ちる瞬間を撮影した結果が下記の画像です。

高さおよそ9センチから直径4ミリの水滴を水に落とし、ハイスピードカメラで分析してみたところ、音が発生したのは水滴が水面の衝突した瞬間ではないことがわかりました。水滴が水面に当たると、その衝撃が水面下まで伝わって大きな凹みができ、最後に小さな気泡が取り残されているのがわかります。映像と音声を分析すると、この気泡が細かく振動することで、ぴちょん、という音が発生がしていました。つまり、この気泡こそが音の正体だったのです。

詳しくは下記の動画もご覧ください!

そして「ぴちょん」音を防ぐ方法も発見!

アガルワル教授が、ブラジルでの夜を相当根に持っていた…のかどうかは知りませんが、やはりあの音を防ぐ方法を知りたかったのでしょう。さらに実験と研究を続けました。 

結論から言うと、あの音を消す方法は簡単。水に液体洗剤を垂らしておくだけ、です。

音の原因が気泡なのはすでに説明したとおりですが、これが音を発生されるメカニズムを知ることで、この予防策がわかりました。

なんと、気泡は「1秒間に5000回」ものスピードで激しく振動し、水面全体を震わせて音を出していたのです。

つまり、音の原因は気泡でも、発生源は「水面全体」だったというわけ。

なので、液体洗剤の界面活性剤によって水面の表面張力に変化を加えてやれば、あの音もしなくなります

アガルワル教授の執念、ここに結実といった感じですね。

古い課題も最先端のツールや方法で解決できるかも

この実験は、身近な「あの音」のメカニズムと防止策を解明した点も面白いですが、何より素晴らしいのは「1世紀以上も謎だった事象を最先端の方法で解明したこと」でしょう。

私たちのまわりには、当たり前すぎて見過ごされている課題が多くあります。「ぴちょん」音のように生活空間にもたくさんありますが、ビジネスの現場にも多くあることでしょう。IoTの現場でも、これまでに取れなかったデータが取れるようになったことで、業務フローが改善されたり、効率が上がったり不具合の原因が解明されたりする事例が最近多く見受けられるようになってきました。

アガルワル教授とフィリップスの今回の実験は、「よくわからないけどそういうもの」として受け入れてしまわず、最新の手法でデータを集め、ツールで分析することで答えが得られるかも、と挑戦することの大切さを教えてくれるものだったのではないでしょうか。

(塚岡雄太)

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