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「仮説思考とはどのような思考法?」
「身につけるメリット・デメリットが知りたい」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
仮説思考とは、課題に対して仮説をたててスピーディに問題解決をするための思考法のことです。コンサルティング領域でよく用いられる言葉で、元ボストンコンサルティング日本代表の内田和成氏により『仮説思考 BCG流問題解決・解決の発想法』にまとめられたことで広まりました。仮説思考は、コンサルのみならず幅広い職種・業界において役立つ武器となります。
本記事では、今や仕事の必須ツールともいえる仮説思考の使い方や「仮説力」を高めるためのトレーニング方法を紹介します。仮説思考力を身につけることで得られるメリット・デメリットも解説するためぜひ参考にしてください。
仮説思考とは「仮説を立てることでスピーディに課題に対処する思考法」のことです。課題に対して仮説を立てて検証していくことで効率よく問題を解決できます。ここでは仮説思考の基本情報として以下の3つを紹介します。
それぞれ確認していきます。
ビジネスや日常生活において思わぬ課題に直面することがあります。課題の解決の際に仮説思考を身につけておくことで迅速な意思決定が可能となり、早急な問題解決につなげられます。
例えば、ビジネスにおいて新規事業の立ち上げや新商品の開発を行う際に、綿密なデータ収集や調査・分析をしたとしても確かな答えが出るとは限りません。特にビジネスでは時間的な制約がボトルネックとなり、限られた時間で意思決定をする必要があります。仮説思考を身につけることで、迅速な意思決定が可能となり、限られた時間の中で最大限の成果につなげられるのです。
網羅思考とは「情報収集→分析→抽象化→可能性の検討」のプロセスで最良の答えを導き出す思考法です。網羅思考は完璧主義の方が多い日本人に好まれやすい思考法ですが、情報収集や分析、可能性の検討に時間がかかりすぎることが欠点です
例えば、ビジネスにおいて最善の一手を導き出せたとしても他者(社)に先んじられてしまっては意味がありません。また時間をかければ市場が変化し、回答の根拠としていた前提が崩れてしまう可能性が高まります。頭の中で仮説を立てて検証を進める仮説思考とは対極に位置する思考法となります。
仮説思考は課題に対しての仮説を当てて答えを検証していく思考法です。一方でクリティカルシンキングとは仮説思考で立てた仮説が本当に正しいかをチェックする思考法となります。
クリティカルシンキングは日本語で批判的思考という意味を持ちます。仮説思考で立てた仮説を批判しながら検討することでより確かな答えを導き出せるのです。
仮説思考を身につけると仕事や日常生活において役立ちます。ここでは、仮説思考を身につける5つのメリットを紹介します。
それぞれのメリットの詳細を確認していきます。
仮説思考を身につけることで仕事などで業務効率を上げられます。高い仮説思考力があれば、課題に対して試行錯誤などの余計な作業をする必要がなくなります。
そのため、手当たり次第にさまざまな調査を行い無駄に時間を消費してしまうことを避けることができるでしょう。ビジネスシーンや日常生活において効率性を高めたい方は身につけておくべき思考法といえます。
仮説思考を身につけることで新規プロジェクトや新規商品の開発などの際に全体を俯瞰しながら進められます。新規プロジェクトや新商品の開発などこれまでに経験のない仕事をする場合は、仕事内容が分からずに進め方に試行錯誤してしまいます。
スピーディにスタートを切らなければならない場合でも、試行錯誤を繰り返していると時間ばかり消費してうまく業務を進められない場合もあるでしょう。仮説思考があれば大局的に物事を判断できるためスピーディにプロジェクトを進行できます。
仮説思考を身につけることで問題解決にかかる時間を大幅に短縮できます。例えば、ある課題に対して綿密な情報収集や調査、分析を行えばある程度は正確な答えを導き出すことができるでしょう。
しかしながら、情報収集や調査、分析には多くの時間が必要となります。仮説思考は頭の中で仮説を立てて検証していくため問題解決のために多くの時間が必要ありません。問題解決にかかるスピードが上がる点も仮説思考を身につけるメリットといえます。
仮説思考を身につけることでリーダーシップ力を磨ける点もメリットです。リーダーには企画の立案や提案、部下のマネージメントを行う力が求められます。
仮説思考を身につけて、収集した情報から説得力のある仮説を立てることができれば社内や部下からの合意を得やすくなります。社内や自身が属するコミュニティでリーダーを目指したい方もつけておくべき思考法といえます。
仮説はあくまでも仮の答えであるため、検証していくなかで仮説が間違いであった場合には、すぐに軌道修正できます。
また、仮説を立てて外れていた場合でも、仮説が間違っていたことが新たな答えのヒントになることもあります。仮説思考は考えた仮説の軌道修正を迅速に行える点もメリットといえるでしょう。
仮説思考を身につけるとメリットだけでなくデメリットもあるため注意が必要です。
以下でそれぞれの詳細を確認していきます。
イノベーションを起こすようなクリエイティブな発想はいろいろな試行錯誤を繰り返すなかで偶然見つかることがあります。
一方で、仮説をもとに検証を進めていく方法では偶然的な発生を見つけることが難しくなります。そのため、仮説思考を身につけてしまうとクリエイティブな発想からは遠ざかってしまう場合があるのです。
仮説思考は仮説に沿って課題を解決していくため、他の可能性を見落としてしまう場合があります。
網羅思考のように必要な情報をすべて収集して調査、分析を行うわけではないため「他にあったベストな答え」を見逃してしまう場合があるのです。課題解決のスピードにこだわる場合は仮説思考は最適といえますが、ベストな答えを導き出したい場合は可能性を見落としがちになるため不向きな思考法といえるでしょう。
仮説思考の具体的な手法に進みましょう。基本プロセスは以下の5ステップです。
以下でそれぞれのステップの詳細を確認していきます。
仮に「製品Aの売上を30%アップさせるにはどうすればよいか?」などの問いがあるとします。まずすべきなのは製品Aはどのような商品なのか、製品Aの月々の生産量はいかほどかなど、今ある検討材料を並べることです。ここで重要なのは追加で情報収集はしないこと。あくまで今ある情報を仮説の材料とし、自身の持つ知識と組み合わせて使います。
材料を並べられたらすぐに仮説を出します。「生産量が少ないので生産ラインの改善が必要なのではないか」「知名度が低いのでネット広告で新たな顧客を獲得する必要があるのではないか」……このように今ある判断材料から思いつく限りの仮説を出しましょう。
仮説を出しつくしたら、優先順位をつけます。ここで初めて情報収集を行うことになります。「製造ラインの改善が必要」などの仮説なら競合製品の生産量や生産ラインの停止時間などのデータ・情報が有効な手がかりとなるでしょう。仮説を出した時点で自分の中で因果関係の推測と何となくの優先順位が浮かんでいるはず。検討はその裏付けのために行います。仮説の前提に誤りがあれば、優先順位を入れ替えます。
仮説の優先順位がついたら実行と検証のフェーズに入ります。製造ラインの改善の場合、機械の調整やマニュアルの見直しなどが挙げられます。ちなみにこの場合、工場がデジタルツイン化されていれば、実行・検証のコストは大きく削減できます。実行した結果を測定し、仮説が正しいかを判定します。
最後は仮説の修正です。100%仮説通りうまくいく場合はまれです。想定していた結果になぜ結びつかなかったのか? 問いを繰り返して、より精緻な答えを導き出しましょう。「仮説検討~修正」のサイクルは何度も繰りかえし、新たな前提が出れば仮説を立て直すこともあります。
仮説思考力はトレーニングをすることで高められます。仮説思考力を高める具体的なトレーニング方法を3つ紹介します。
仮説思考を高めるために役立ててください。
仮説を立てるための引き出しを増やしておくと仮説を導きやすくなります。さまざまな知識を身につけて情報を立体化しておくことで仮説を立てやすくなります。
具体的なトレーニング方法として、日頃から目の前の事象に対して疑問をもつようにしてみましょう。意識的に物事に対して仮説を立てることで仮説思考力を高められるでしょう。
物事を反対側の異なる立場から考える練習をしておくことも仮説思考力を身につけるトレーニングになります。例えば、ある商品が売れない場合に商品を作る販売者の側面で考えるのではなく消費者の視点で物事を考えることも重要です。
消費者はなぜ商品を購入しなかったのか検討することでプロモーションの仕方のヒントをつかめます。日頃から反対側から物事を考えるトレーニングをしておくことでいざ課題に直面した際にさまざまな角度から仮説を立てられるでしょう。
仮説思考を身につけるためには株価を予想することもトレーニングにつながります。株価は企業の業績や景気、世界情勢に左右されながら価格が変動します。
興味がある企業の株を決めたら株価の変動を予想してみましょう。一定期間に株価が上がるか下がるかさまざまな要因から仮説を立てることで仮説思考力を高めるトレーニングとなるでしょう。
仮説思考力を高めるための秘訣を2つ紹介します。
以下でそれぞれの秘訣を確認していきましょう。
仮説は事実を組み合わせて発想を飛躍させることで生まれます。「So what?(だからどうした?)」は、その発想の飛躍を支えるキーワードです。例えば「順調に成長を続けていた製品Aの売上は昨年10月に落ち込んだ」という事実があるとします。
もし「その少し前に他社が同領域で新製品Bを出していた」という事実があれば、「製品Bにシェアを奪われたのではないか」という仮説が導き出せます。そこで「So what?」を用いれば「製品Aと製品Bの全面的な比較が必要だ」と発想できます。さらに「So what?」を重ねれば「同性能で価格差がある場合製品Aの製造コスト削減に取り組む必要があるor性能を高め製品Bと差別化を測る必要がある」という仮説が導き出せるでしょう。
このように導き出した仮説は「So what?」の繰り返しによって具体性を深めていきます。「仮説を実行・検証する」フェーズに入るため、具体的な行動につながる仮説に至るまでは「So what?」を繰り返しましょう。
仮説に最速で到達するコツとして挙げられるのが「仮説につながる知識を法則化してストックしておく」ことです。
「BtoB製品の場合、マス広告を出しても受注につながりにくい」「IT化の導入が遅いC業界はデータ活用によるラインの見直しで生産性が高まりやすい」といった法則がストックされていれば、製品AがC業界のBtoB製品である場合「広告よりも工場のDXに力を入れた方がよいのではないか」という仮説を導き出せます。
もちろん法則がそのまま当てはまるほどビジネスの課題は単純ではありません。しかし、仮説思考で重要なのは最速で仮説にたどり着くことです。仮説の検討・修正はそのあとで行えます。まずはあえて丁寧さを棄てて、推論を進めましょう。そのための武器としてストックした法則が役立つのです。
スピーディに答えにたどり着くための思考方法である「仮説思考」をご紹介しました。仮説思考の具体的な手順を紹介してきましたが、多くの人が無意識にビジネスや日常生活で仮説思考を使っているのではないでしょうか。
「目的地に早く着くには遠回りして渋滞を避けた方がよいだろう」と考えるのも立派な仮説思考です。本記事の内容を踏まえて“意識的に”仮説思考を行ってみてください。
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